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S字状口縁台付甕えすじじょうこうえんだいつきがめ
 (南部Tなんぶいち遺跡)
 

 
南部T遺跡は、井田川左岸に営まれた弥生後期から古墳前期の集落跡です。
この土器は、古墳時代初頭(約1800年前)に川や水をおさめる祭祀のため、旧河川跡に多数の土器をまとめて廃棄した中から発見されたものです。
 
S字状口縁台付甕
S字状口縁台付甕
 
この土器は、S字状口縁台付甕(以下、S字甕)と呼ばれ、伊勢湾岸地域に起源を持ち、九州北部から東北まで広範囲に分布する、非常に特徴的な軽量薄甕けいりょううすかめで、大きさが口径11.8cm、器高16.8cmの小型品です。
 
S字甕は、0(ぜろ)類・A類(2世紀)、B類・C類(3世紀)、D類(4世紀)、宇田型甕(5から6世紀前葉)の6つに分類されています。
 
今回の出土品は、特徴からS字甕B類新段階に位置づけられ、東海系とうかいけいトレース第一次拡散期に相当する遺物と考えられます(愛知県埋蔵文化財センター 赤塚次郎氏のご教示による)。
 
S字甕本体および台部内面の補充粘土ほじゅうねんどについて、胎土たいど分析研究会の三辻利一氏に胎土分析を行っていただきました。その結果、どちらの胎土も在地産のものであることが分かりました。このことは、東海地方の土器製作者の来訪ないしは東海地方で製作技術を習得した者がいたと考えられ、東海地方と富山市(婦負ねい)との間に何らかの人的交流があったことを物語っています。
(堀内)
参考
S字甕研究室 http://ukigami.com/esuji/


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