安田城跡 歴史の広場
 
令和4年度 自然講座講演録
安田城跡のお堀の新しい活用
堀の水生植物の新しい楽しみ方
-外来種のスイレン、在来種のカキツバタ-
 
 
 
令和4年5月31日(火曜日)、安田城跡再整備検討会議の委員で、富山県中央植物園の中田政司園長(専門:植物細胞分類学)を講師に迎え、安田城跡自然講座「堀の水生植物の新しい楽しみ方-外来種のスイレン、在来種のカキツバタ-」を開催しました。

外来種とは人の活動によって本来の分布域の外の国や地域に導入(移動)された生物種のことで、これに対して本来の分布域に生息・生育する生物を在来種と言います。

講座では、スイレンは、安田城跡の堀で異常繁殖して底泥が堆積する原因になっていること、ため池など自然環境の中に植栽された結果、異常繁殖して下層に光が当たらなくなって本来そこに生えていた水草が全滅したり、魚類や水生昆虫にも悪影響を及ぼしている事例が各地で見られ、大変な手間をかけて駆除されていることを説明いただきました。

また、スイレンは、生態系への甚大な被害が予想されるため、環境省と農林水産省によって、対応の必要性が高い「重点対策外来種」に指定されていること、外来種を意図的に生態系に入れないようにする必要があること、特定外来生物を飼育・栽培したり、販売・移動したりすると違法になり、重い罰則が適用されることが解説されました。

安田城跡の再整備では、外来種であるスイレンを大幅に縮小しますが、本城跡はスイレンの名所となっていることから、管理ができる範囲で植栽し、併せて、在来種で富山県では絶滅危惧植物にされているカキツバタを植栽する計画であること、カキツバタは、スイレンのように異常繁殖しないため管理もしやすく、花が美しく観賞価値も高いので、再整備後のお堀にふさわしいことを説明されました。

資料館の中での説明後、外に出て安田城跡資料館で育てているカキツバタの株や、中田園長が自宅で栽培しておられる株を実際に見ながら、カキツバタの生態や、株分けで容易に数を増やせることなどを、解説していただきました。

講演する中田中央植物園長
スライドによる講演会の様子
栽培中のカキツバタについての解説
スイレンの特徴について解説
カキツバタの説明後は、お堀で繁茂しているスイレンを実際に採取して、スイレンのつくりや、適切な管理をするためには茎のどの部分を切断すればよいのかなどについて解説していただきました。

再整備で植栽予定のカキツバタとスイレンを見比べることにより、安田城跡を、絶滅危惧種と外来種に関する学習の場としても活用できるのでは、と話されました。

今回、安田城跡で新しい活用の試みとして、自然分野を対象とした講座を初めて行いました。

当日は天候が心配でしたが、雨は朝方までには上がり、カキツバタとスイレンの実物を目の前で見ながら講座を聴くことができ、充実した内容となりました。参加者の皆さんは、再整備後は歴史と自然学習の両方を楽しむことができる安田城跡の姿を楽しみにしておられるようでした。