9.考察(4)石材の色彩感覚

Consideration (4)Sense of color
 
7-4でみたように、安山岩には「青」っぽいものと「赤」っぽいものがあり、「青石」「赤石」などと呼んで区別することがあります。その典型として、金沢市産の戸室石は、「青戸室石」と「赤戸室石」と呼び分けられており、青戸室石が高級品として扱われました。
 
金沢市尾山神社門(写真1)や、金沢兼六園の栄螺山さざえやま山頂の石造三重塔(写真2)では、青戸室石と赤戸室石を交互に使うなど、視覚効果を狙った使い分けがされています。
写真1.金沢尾山神社門にみる戸室石の視覚効果 写真2.金沢兼六園栄螺山三重塔にみる戸室石の視覚効果
写真1.金沢尾山神社門にみる戸室石の視覚効果 写真2.金沢兼六園栄螺山三重塔にみる戸室石の視覚効果
高岡市 前田利長墓所(国史跡)には戸室石が使われており、蓮華れんげ文浮彫のある基壇石材等立面は青戸室石 、敷石など平面部分は赤戸室石と区別してあります。これは遠目ではわかりません。また、八丁道はっちょうみち燈籠とうろうにおいては、赤戸室石と青戸室石を混ぜて組み立てており、赤戸室石が多く使われています。
 
立山天狗山石 や八川石では、石仏・石塔に青と赤を意識した例があります。
立山町芦峅寺閻魔堂 の文政2年(1819)阿弥陀三尊石仏では、3体の蓮台・左右両尊の基礎・本尊の基壇 を赤石としており、シンメトリー(左右対称)性も考えられています。上市町大岩日石寺の文政4年宝篋印塔 では、階段状基壇の八川石切石のうち、刻銘された中央の石材のみ赤石とされています(図)
古川
図1.大岩山日石寺宝篋印塔にみる八川石の視覚効果
図1.大岩山日石寺宝篋印塔にみる八川石の視覚効果