修理工事
 
平成22年度から進めてきた事業で効果が得られた修理工法を実践し、その効果を最大限に高めるため、雨漏りしている第70号住居の屋根土を除去して屋根防水シートを葺き直し、堰板など腐朽した材を取替えるなどの長寿命化対策を講じました。屋根土は黒ボク土を再利用しました。
 
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修理工事の概要(PDF、880KB) 北代縄文通信第44号(PDF、525KB)
   
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完成記念 現地解説会資料(PDF、642MB)
 
 
 
 
 
第12回専門家会議
(平成28年9月9日)
 
修理工事中の第70号住居、平成27年度に修理工事を終えた第13号住居を視察し、指導を得ました。また、整備事業報告書について意見交換すると共に、事務局が提示した今後の報告書作成スケジュールを承諾いただきました。
 
(1)第70号住居の修理工事について
前回会議で承認を受けた本工事の仕様から、工事で明らかになった劣化状態の対策を踏まえ、委員との事前協議を経て事務局で作成した変更仕様で施工していることを報告し、承諾を得ました。なお、第1号住居(複製)や第13号住居(複製)と異なり、断熱対策や調湿対策を講じないことは、将来、事業の効果を比較検証するためです。
   
5棟の竪穴住居のうち、第70号住居は雨漏りによって屋根材などの木材の腐朽が明らかになりました。平成18年度に市独自で修理した本住居の丸太材の腐朽状態、および第1号住居と第13号住居の平成15年度の修理後の経過から、本再整備事業で取り入れた長寿命化対策で実現できる効果を見とおすことができ、目標とする耐用年数である20年の実現は十分可能との印象をもつことができたことを報告しました。
   
委員からは、タタキ層は厚くなるほど亀裂が生じやすくなる。その場合、表面は締め固まるが、下部まで十分締め固めることが難しくなり、低密度になると亀裂発生の遠因となること、全体としてタタキ層を厚くすることは問題ないが、何回かにわけてタタキを行った方がよいとの指導をいただきました。また、今回の工事で除却した堰板背面の黒色化部分は菌害の可能性があるとの指導をいただきました。
   
   
(2)第13号住居の経過について
土間が乾燥して生じた亀裂は、タタキ層の下の砕石層の転圧が足りなかったことや原料がよく馴染んでいなかったこと、配合比にも問題があるのではないかとの指導をいただきました。締め固める意図は土の中から空気を抜くことであり、空気をのせるための水は最小限でよく、水が多すぎると、抜けなくなること。また、主柱付近は入念に締め固められており、亀裂の拡大が止まっているのであれば、ストレスは開放されたと判断してよいだろうとの指導をいただきました。
   
 
 
 
 
第13回専門家会議
(平成29年3月14日)
 
平成28年度に修理工事を終えた第70号住居をはじめ、すべての復元建物の推移を確認し、完成した事業報告書の内容も踏まえつつ、今後の課題や事業効果を高めるための留意事項について指導を得ました。また、事業完了を記念して復元建物の市民向けの現地解説会を行いました。専門家会議委員に、本事業で取り入れた復元建物の長寿命化対策を紹介していただき、わかりやすい解説に参加者も満足したとの感想が寄せられました。
(史跡北代遺跡復元建物修理検討専門家会議委員による解説会の様子)
 
 
(1)復元建物の修理状況、推移の確認
防水・防湿シートが施工された竪穴住居4棟のうち3棟で土間に亀裂が生じている。湿気が足りなかったために乾燥亀裂が発生し、また、施工時のタタキ不足と水分量が多かったことも亀裂発生要因と判断されました。収縮歪みなので、亀裂が生じたら埋めるしかないとの指導を得ました。
   
土間の亀裂発生を認知した時から市の判断で中止している第13号住居の薫煙作業は、屋根下地材等の保護に必要な作業であるため再開すべきとの指導を得ました。
   
   
(2)本事業の効果を高めるための留意事項について
復元建物の主構造材をどのように保護するかということがポイントであること、弱点となる不可視部分の維持管理には限界があること、不可視部分が健全に保たれていることが重要なため定期的に専門的器具で分析する必要があること、局所的な不具合によって建物全体が供用に適さない状態に陥ることを避けなければならないとの指導を得ました。
   
本事業では耐用年数という考え方が導入され、その実現に向けて逆算して物事を考えられるようになったことが大きな成果の一つであるとの評価を得ました。
   
第1号住居(複製)で採用した赤土屋根については、不透水性材料を用いた表層加工などを検討することも今後必要になってくるとの指導を得ました。
   
表面排水と建物周辺からできるだけ早く水や湿気を排出するという2点がポイントであることは今後も変わらないため、屋根土をいかにして屋根に留めるかということに尽きるとの指導を得ました。
   
点検時のチェックリストを整備して、適時適切な維持管理を長期間持続できる体制を整備することが重要であるとの指導を得ました。
   
本事業の完了は復元建物のさらなる長寿命化に向けて検討するスタート地点に立つことができたことを意味しており、復元建物ごとに本事業の効果を検証することが重要であるとの指導を得ました。
   
復元建物の部材名称等を見学者に簡明に示すなど、本事業の成果を日ごろの普及活用に活かすことを考えるべきとの指導を得ました。