Q.6鏡石かがみいしとは何ですか?
A 富山城石垣にある巨石は、鏡石と呼ばれます。この名前は、石の表面が鏡のように平らなことから付けられたようです。このような鏡石と呼ぶ巨石は、多くの城に存在し、藩主の権力の象徴とされました。鏡石は、藩主の住む御殿への通路に置かれ、巨石を見せつけることで、来る人に威圧いあつ感を与える効果がありました。また石工職人が巨石を切り出し運ぶ能力が高いことをアピールする効果もありました。

富山城の鏡石は、それほど大きなものではありませんが、数年前、5石あるうちの1石を解体したところ、まな板のようにきわめて薄く割られていたことに驚いたわけですが、薄ければ薄いほど強度が弱くなる弱点にも関わらず、なんらの補強もせず、石の下部を厚くしたり、周囲の石との組み合わせを緻密にしたりして自立するようにしていたことにも、高い技術が読み取れます。

また、富山城では5石の鏡石が置かれています。この5という数字は、中国の陰陽五行思想いんようごぎょうしそう(日本では陰陽道おんみょうどう、風水としても紹介されています。)でいう、5つの元素(火・土・水・金・木)に対応します。中央は土であり、その東西南北に4つの元素が並びます。またそれぞれの元素には形があり、土は四角、西の金は月形などと決められています。富山城の鏡石の配置と石の上部の形を比較すると、その陰陽五行思想の示す内容とほぼ一致します。

陰陽五行思想の根本原理は、「万物が永遠に不変である」ということです。石垣を築く石工がなぜ陰陽五行思想を選んだかというと、自分たちの積んだ石垣が永遠に崩れないようにという願いと一致するものだったからと考えられます。