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岩石帯磁率による石材同定は、花崗岩・安山岩について有効性が実証されています。 |
特に花崗岩は、帯磁率の違いをもとに磁鉄鉱系とチタン鉄鉱系に分けられています。この違いは花崗岩マグマの生成に関与した物質の性質を反映しています。 |
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花崗岩類の帯磁率調査では、朽津信明氏らによる石燈籠・鳥居等大型石造物の調査成果があります。松江藩(鳥取)では、18世紀前半以降に磁鉄鉱系からチタン鉄鉱系へと変化し、藩外品購入から藩内産使用へと変わりました。一方福岡藩では、1902年以降藩内産から藩外品へと変わったことがわかっています。 |
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石川県金沢城調査研究所では、金沢城の石切丁場戸室山周辺の戸室石の帯磁率計測を行い、0から10、10から20、20以上×10-5SIの3区分が示されました。 |
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高岡市教育委員会による史跡前田利長墓所及び瑞龍寺・八丁道の石造物調査では、墓所をはじめ、敷石・燈籠・手水鉢・墓石等のところどころに戸室石が使われていました。利長墓所本体では、上段が赤戸室石、蓮華レリーフのある下段では青戸室石というように区別して使われており、ほかの石造物でも赤戸室石・青戸室石が部材別に使い分けられていることがわかりました。 |
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長秋雄氏は、戸室山と金沢城石垣の帯磁率測定を行った結果、赤戸室石・青戸室石で値が異なること(青戸室石は10から20×10-3SI、赤戸室石は1から8×10-3SI)、石の青・赤の色調を意識し意匠性の高い石垣を築いたことを指摘されました。 |
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中村由克氏は、長野市善光寺の大型石造物の計測を行い、安山岩(郷路石)と凝灰岩(髻石)とが識別可能であることを示しました。 |
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これらの研究により、花崗岩・安山岩・凝灰岩の識別に岩石帯磁率が有効である見通しが立ったといえます。 |
(古川) |