国立科学博物館便り(15) 2014年7月

2010年出土人骨のDNA分析

公益財団法人富山県文化振興財団埋蔵文化財調査事務所が2010年に発掘した人骨からミトコンドリアDNAを抽出し、APLP法とPCR-Luminex法による実験で13個体のハプログループを決定できた。
検出されたハプログループは、N9b:5個体(38.5パーセント)、M9a:3個体(23.1パーセント)、A:2個体(15.4パーセント)、M7:2個体(15.4パーセント)、G:1個体(7.7パーセント)であった(図1)。
 
図1.小竹貝塚、関東縄文(中期以降)、現代日本人のハプログループ頻度
図1.小竹貝塚、関東縄文(中期以降)、現代日本人のハプログループ頻度
(公益財団法人富山県文化振興財団埋蔵文化財事務所2014『小竹貝塚発掘報告 第三分冊 人骨分析編』より抜粋)
 
現代日本人で最も大きな比率を占め、渡来系弥生人の主体と推測されているハプログループD4が、小竹貝塚から検出されなかったことは、ハプログループD4が渡来系弥生人の系統であるという仮説(篠田2007)を支持している。
中期以降関東縄文人に検出されるハプログループが、縄文時代前期に検出されたことは、縄文時代前期から中後期にかけての縄文人の遺伝的な連続性が証明されたこととなる。
また、すでに縄文時代前期において、北方(N9b、A、G)と南方(M9a、M7)という異なる起源地を持つ可能性のあるDNAの系統が混在していることが分かった。
 
富山市出土人骨(1991から2008年出土人骨)もDNA分析を行ったが、DNAが残っていなかった。これは、表層に近い地点で出土した人骨にDNAが残っていなかった2010年出土人骨と同様の要因によるものと考えられる。

科博・人類研究部長 篠田謙一
 
表.ミトコンドリアDNAのハプログループの特徴
グループ 特徴
N9b
現代の沿海州先住民や北海道の縄文人に多い。
北方系。
縄文人を特徴付ける。
A
北東アジアに多く、旧石器時代にバイカル湖周辺で誕生し、この地域から南下してきた。
北方系。
M7a
現代の沖縄県に多い。
南方系。
縄文人を特徴付ける。
M7b
M7c
東南アジアから中国南部に多い。
南方系。
M9a
東南アジアに起源を持ち、雲南〜チベットと東アジアの異なる地域に拡散した。
南方系。
D4
D4a
日本、朝鮮半島や中国東北部に30から40パーセントを占める。
渡来系弥生人の主体をなしていた
 
参考文献
篠田謙一 2007『日本人になった先祖たち』日本放送出版協会
篠田謙一 2014「第Y章 人骨の理化学的分析・形態分析 3 DNA分析」『小竹貝塚発掘報告−北陸新幹線建設に伴う埋蔵文化財発掘調査報告X 第三分冊 人骨分析編』PP4-15 公益財団法人富山県文化振興財団埋蔵文化財事務所