シリーズ縄文講座(23)
“仮面土偶”
 
縄文時代晩期(約2700年前)の仮面土偶
富山市豊田本町にある豊田大塚・中吉原遺跡から、平成7年の発掘調査で特徴的な土偶の頭部が出土しました。それは、顔が後頭部の輪郭よりもひとまわり大きく平らに造形され、額と両耳部分に穴をあけた土偶です。神通川を挟んだ呉羽丘陵にある長岡八町遺跡でも、類似した土偶が出土しています。
同遺跡の土偶も顔が平らに磨かれ、両耳部分にあけられた穴の裏側に紐の表現があります。祭祀道具である石刀等の近くで発見されたこともあわせ、仮面を装着した女性をかたどった土偶と考えられています。
同様の特徴を持つ豊田大塚・中吉原遺跡の土偶も仮面を装着した女性をかたどったものと考えられます。
豊田大塚・中吉原遺跡と長岡八町遺跡の仮面土偶
 
“仮面祭祀”の広まり
縄文時代後期(約3400年前)の石川県能登町真脇遺跡からは、呪術者が使用した土製仮面が出土しています。気候の寒冷化が始まった後期に仮面祭祀が創出されました。
仮面祭祀とは、土偶や石棒に頼った従来の呪術と異なり、神や自然との対話を行う新たな呪術のことです(シリーズ縄文講座8 縄文土偶の“まつり”その2)。呪術者が仮面をかぶることで精霊となり、神や自然と直接対話をして願うことにより、当時の厳しい環境を生き抜こうとしたのでしょう。その呪術者の姿が、土偶の造形にも反映されたようです。
仮面土偶は、県内ではこれら2例しか見つかっていません。縄文時代の精神文化を探るうえで貴重な資料です。
仮面土偶の出土地点
仮面土偶の出土地点