富山藩主 前田家墓所 長岡御廟所の調査
7.墓所石造物の帯磁率調査
(4)考察
3.石造物の変化と帯磁率の関係
 
藩主墓石の石材は、二代墓が常願寺川産の立山天狗山石(安山岩)を使った以外、瀬戸内方面と推定される花崗岩を使っていました。
藩主墓石・墓前燈籠・家臣寄進燈籠は、帯磁率からみると、@八代を過渡期として七代と九代との間、A十代と十一代の間、に大きな画期があります。
 
一方、石造物の年代変化からみると、@五代と六代の間、A八代と九代の間、の2つの画期があります。その理由として、@は藩主が帰依きえした宗教の変化(日蓮宗から曹洞宗へ)、Aは九代藩主利幹が大聖寺だいしょうじ藩から迎えられたことが推定されます。
また、笏谷石切石は、二代と三代の間に画期があります。
 
よって、いずれも帯磁率の画期とは、一致していません。
帯磁率の画期は、石材の採石地・買い付け先の変更などを意味するものと推定されます。
 
富山藩主墓では、初代墓の様式が十一代まで継承されました。途中で数度採石地が変更した可能性がありながらも、瀬戸内周辺の花崗岩が調達され続けました。また笏谷石切石は、三代から規格の統一姓が強くなり、隅角石も登場して幕末まで継続して使われました。
 
 (古川)

*調査にあたり、国立研究開発法人産業総合研究所地質調査総合センター地圏資源環境研究部門主任研究員長秋雄氏に多くの御指導を得ました。
【参考文献】 
『富山藩主前田家墓所長岡御廟所石造物調査報告書』2016 富山市埋蔵文化財センター編
(この報告書はお分けすることができます センターの出版物