修理工事
 
平成23年度の木材劣化診断で主柱1本を取り替える必要性が指摘されていた第13号住居の修理を行いました。
 
第13号住居修理工事の視点と工夫
第13号住居では、平成15年の修理で屋根土の下に防水シート(ウルトラチャンピオン)を敷設し、雨漏りを防止する措置を講じました。また、防水シートの下には調湿建材(ヒューミライト)を埋め込み、湿度調整を行ってきました。新しく調達した垂木材の根元にも防水シートを巻きつけていました。これらによって、クリ丸太材が屋根土と直接触れることがなくなり、当該部分の腐朽を抑えることができていたため、平成27年度の修理工事ではこれまでと異なり、土屋根を解体せずに屋内外の長寿命化改修を行いました。
具体的には、土間・腰壁や透水管周囲に第13号住居(複製)と第1号住居(複製)と同様の対策を講じました。これは、平成22年からの検討の結果、確立した土屋根竪穴住居の長寿命化改修策です。
 
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北代縄文通信 第42号(PDF、700KB)
 
 
 
 
 
第10回専門家会議
(平成27年7月3日)
 
修理済建物の経過観察を踏まえ、今年度に実施する第13号住居の工事での留意点を指導いただくと共に、整備事業報告書作成に向けた意見交換を行いました。また、今後計画している第70号住居の修理の方向性について、承諾いただきました。
 
(1)修理済建物の経過について
第13号住居(複製)の経過について
出入口からの水の流入が繰り返されているので、流入口を埋めるなど何らかの措置を講ずるべきである。水勾配を少し変えて排水性を高めてもよく、そのうえで砂利を敷いてもよいとの指導を得ました。
シロアリが増えるとクロアリが増えるので、今春から目立つ出入口丸太上のクロアリの通行状況も経過観察すべきであるとの指導を得ました。
第1号住居(複製)について
赤土屋根の維持管理として、散水後に亀裂へ土を入れ、大人が慎重に踏み固める必要がある。土は空隙があるものの、一度潰れると膨らまない。1cmから2cm幅の亀裂が入ると、長寿命化が遠のきかねないので、亀裂が大きくなる前に手当てする必要があるとの指導を得ました。
   
(2)第13号住居の修理工事について
第1号住居(複製)と第13号住居(複製)の施工実態と経過から、土間叩きにおける亀裂発生の有無は、施工時の気象条件の差との因果関係が明白で、急激に乾燥することを避けることが重要である。施工後の養生に留意すべきであるとの指導を得ました。
   
(3)整備事業報告書について
文化庁文化財部記念物課文化財調査官から、整備報告では使用した資材を明示することが重要である。製品の選定が目的ではなく、使用資材と施工実績を後世に残すことが目的であるとの指導を得ました。また、本事業をとおして、どのような環境を維持できれば長寿命化が可能で、その実現にはどのような現代工法を取り入れると効果的か見えてきた。気象差が施工差につながっており、他地域でデータを応用するための取扱説明書は重要との指導も得ました。
   
(4)第70号住居の修理工事計画について
これまでに効果が得られた修理工法を実践し、その効果を最大限に高めるため、屋根土を除去して屋根防水シートを葺き直す。屋根土は黒ボク土を再利用することとし、工事の詳細計画は今後詰めるという事務局の方向性を承認いただきました。
 
 
 
 
 
第11回専門家会議
(平成27年9月8日)
 
修理工事中の第13号住居を視察し、指導を得ました。また、整備事業報告書原稿(委員の専門分野)の意見交換を行うと共に、事務局が提示した今後の報告書作成スケジュールを承諾いただきました。
 
(1)第13号住居修理工事について
取替えを予定している主柱以外の柱(主柱・出入口支柱)も特に土間面付近で断面の欠損が大きいが、腐朽部分を除去して木材保存剤を塗布し、接木するとしても、強度上の効果は何もない。強度上の対応をどうとるかという問題であり、後日改善案を提示するので、事務局の判断材料として欲しい。このまま埋め戻すよりは良い方法を探すことができればよいとの指導を得ました。
 
(2)第1号住居(複製)の経過について
おおむね順調に推移しているとの評価を得ました。
屋根土が崩落することと亀裂が入ることの直接的な関係性はない。極端に乾燥すると、亀裂だけでなく、塵のような状態で飛散する。それ以前に乾燥を防ぐ状態(曇天・湿度)になったことで、亀裂が目立たなくなったのではないか。亀裂の発生やその程度は、水の浸透により粘土鉱物が膨潤するイメージで捉えればよいとの指導を得ました。
 
(3)第70号住居の修理工事計画について
事務局提案の施工法を承諾いただきました。