修理工事
 
第13号住居(複製)の屋根解体と丸太材等の調達および加工、防腐処理を行いました。
 
広場オープン時は1年で材料調達、加工、建築といったすべての工程を行いました。建築材となるクリ丸太材等の調達と乾燥時間が必要となり、建築は積雪期となりました。乾燥が不十分な丸太材は組上げ後に歪んで強度低下の一因となり、積雪期に施工したことで住居内部に湿気を溜め込んでしまいました。
 
今回は、建築材の調達と加工、すべての材表面に防腐処理を施してから、建築までの約1年を乾燥期間としました。
 
広場オープン時は、樹皮付きのクリ丸太材を小舞(屋根小屋組の横材)にそのまま用いましたが、樹皮付近が早く腐朽し、木材加害昆虫の誘引箇所ともなりました。
 
新規に調達する小舞材は樹皮付近を除去しました。クリ樹皮をある程度の面積で剥ぎ取るには、水分のある春季に作業することが欠かせません。縄文人もクリなどの樹皮を土屋根の下地材として使っていたと考え、縄文人と同じような季節に作業しました。
 
平成22年度工事の詳細はこちら!
北代縄文通信 第31号(PDF、583KB) 
 
 
 
 
 
木材劣化診断
 
平成15年度に市独自の修理を行った第1号住居と高床倉庫を対象として、専門家(木材劣化診断士)による一次診断(視診、触診、打診、刺突し診)と、藤井義久氏(林産加工学)の協力を得て二次診断(含水率測定、超音波伝播時間測定、穿孔抵抗測定)を行いました。
 
第1号住居の診断結果
   
@ 小屋組部分(垂木、小舞)は含水率が低く、腐朽リスクは小さい。
   
A 5本すべての主柱下部表面に腐朽が認められ、うち1本は穿孔抵抗測定から内部にも芯腐れ等による空洞化が推定され、定期的な調査が必要。
   
高床倉庫の診断結果
   
@ 小屋組部分は含水率が低く、腐朽リスクは小さい。
   
A 6本すべての主柱下部表面に腐朽が認められ、うち1本は特に表面の腐朽が進行し、穿孔抵抗測定から内部にも芯腐れ等による空洞化が推定され、補修が必要。
   
B 梯子材は腐朽度が高く、早急に取り替える必要がある。
   
測定の様子   話し合い中
含水率測定   一次診断
時間測定中   穿孔抵抗測定
超音波伝播時間測定   穿孔抵抗測定
 
 
 
 
 
木材試験体設置
   
目的
クリ丸太材の試験体を縄文広場の土壌に、@接地・非接地、A暴露・非暴露、B耐久処理・非処理の状態で設置し、経年変化を調べ、土屋根竪穴住居の土壌や気象との関係を観察することを目的としています。
経過観察により、今後の修理方針や妥当性を検証するための基礎資料を得て、土屋根竪穴住居の設計および仕様作成の資料とすることを目指しています。
   
木材試験体
小舞材を想定した直径6cmのクリ丸太材を16本準備し、@木材保存剤無処理材、A木材保存剤処理材、B木材保存剤無処理材+防水シート巻付材、C木材保存剤処理材+防水シート巻付材の4種(各4本)を製作しました。1種につき2本ずつを一組として広場内の2ヶ所に設置し、試験体群を覆屋で覆って雨や雪が直接試験体に当たらないように設置しました。
注意喚起
木材試験体の設置 設置案内
 
 
 
 
 
第1回専門家会議
(平成22年12月22日)
 
現状把握後、修理の方向性を検討しました。長寿命化の検討にあたって、次の方向性を定めました。
@ 考古学以外の知見からも修理方法を検討することを基本とする。考古学から推定、復元される仕上材の下に現代資材を施工して長寿命化を図りつつ、推定される縄文人の生活に近づけるよう検討する。
A 史跡公園での復元建物整備にあたって、どこまで現代工法を許容するかも十分検討する。
B 縄文人と同様に、再利用または転用できる材は可能な限り活用して修理を行う。工事費の低コスト化、および長期的な維持管理コストの低減を図る。
C 検証可能な方法で実験及び修理工事を実施し、設計および仕様作成の資料とする。
平成15年度、平成16年度に実施した市独自の土屋根竪穴住居の修理については、丸太材を太いものに取り替えて雨水の遮断を目指しており、木材保存の観点からは合理的な対応と評価されました。また、目視観察により、結露や雨水等の水滴が木材表面と内部に浸透し、木材内部にいた好気性の木材腐朽菌(担子菌)が発芽したものと推定されました。
 
再利用または転用する丸太材は十分乾燥させ、傷んだ部分をしっかり除去することが重要であるとの指導をいただきました。
 
 
 
 
 
第2回専門家会議
(平成23年3月1日)
 
平成23年度から24年度を実験、検証期間とし、平成25年度上半期までに土屋根竪穴住居の長寿命化に向けた修理工法を検討することとしました。また、今回の修理工事で目指す耐用年数を次回専門家会議で事務局が提示し、検討の前提とすることとしました。
 
(1)土屋根竪穴住居の土間および壁面について
断熱性がないと結露の要因になること、現状の屋根土(黒ボク土)は腐植質が多いために屋根土としては不向きであるとの助言をいただきました。
 
(2)土屋根竪穴住居の建築材について
劣化外力として、@土中からの水分と菌類の侵入、A空中を浮遊する胞子、B木材加害昆虫(成虫が飛来、産卵)、C結露や土間浸水があるとの指導をいただきました。
平成15年度、平成16年度の市独自修理後の土屋根竪穴住居において、@雨掛部(土留め、けら場)、A垂木尻、B主柱基部(地際付近)が今後劣化する懸念があり、当該部は水切確保と保存処理による腐朽および虫害対策が鍵になるとの助言をいただきました。
 
劣化外力と高耐久化策図
専門家会議で指摘された、土屋根竪穴住居(木材)の
劣化外力と高耐久化策
(藤井義久氏による)
(3)その他
建築(修理)初期の劣化対策と維持管理とのバランス、立地環境(日照、風向き、地下水位)も踏まえ、修理方法の検討を行うこととしました。
平成15年度に市独自の修理を行った第1号住居と第13号住居の浸水要因は、屋根に敷設した防水シートの末端処理が不充分なことによる可能性が高く、延伸させるべきとの指導をいただきました。