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藩主墓基壇縁石・拝所敷石・拝所までの参道に使われた笏谷石切石の総数は、数えていませんが、相当量に上ります。 笏谷石の富山への搬入は古く、16世紀中頃から始まります。 |
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「尺六」(長3尺、幅1尺、厚6寸) |
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「尺二」(長3尺、幅1.2尺、厚3.5寸) |
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「五寸板」(長3尺、幅1.5尺、厚3.5寸) |
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等が知られています。これは、寛永3年(1626)頃、福井藩が三国湊から積み出す石材の大きさに規制をかけ、長3尺のものに限定したためとされています。 |
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初代墓から九代墓の基壇切石のうち、この3尺物は、二代墓なし、八代墓が最多32個、平均は12.8個です。割合は、八代墓が76%、それ以外は50%以下です。 |

3尺物の使用状況 |
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このうち「五寸板」は初代墓に1割程度存在し、「尺二」は三代以降に多く使われています。 |
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全体についてみると、長さは最大4.6尺、最小1.2尺です。初代・二代では、長さ3.2尺を超えるものが多く存在し、特に二代ではその割合が86%と高い。三代以降は長さ3.2尺を超えるものがなく、平均2.84尺から3尺です。 |
3尺前後のものは、前後2寸の範囲に収まるものが多く、三代以降は83%から100%です。 |
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尺長 |
初代 |
二代 |
三代 |
四代 |
五代 |
六代 |
七代 |
八代 |
九代 |
<2.8 |
20 |
3 |
0 |
2 |
5 |
8 |
1 |
1 |
9 |
2.8〜3 |
6 |
0 |
10 |
13 |
10 |
4 |
15 |
5 |
5 |
3 |
10 |
0 |
15 |
9 |
7 |
21 |
12 |
32 |
9 |
3〜3.2 |
5 |
2 |
14 |
20 |
15 |
14 |
5 |
4 |
20 |
3.2< |
7 |
30 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
計 |
48 |
35 |
39 |
44 |
37 |
47 |
33 |
42 |
43 |
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寸法別切石数 |
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基壇の隅角は、初代・二代では、平石を合わせるが、三代以降は隅角部専用の直角特殊品(以下「隅角石」と呼ぶ)を置くようになります。この隅角石は、一辺が3尺前後、残る一辺がその半分の長さとなるL字形の石です。隅角石は、製作や運搬は困難ですが、隅角に小口が見えず、見栄えがよいといったプラスの視覚的効果があります。 |
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以上のことから、笏谷石切石は、二代と三代との間で大きく様相が変化することがわかりました。初代・二代では3尺物がわずかで、それ以上4.6尺までの長尺物が多いのに対し、三代以降では「尺二」にほぼ統一され、新たに隅角石が登場します。 |
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福井藩が長さを3尺に規制した寛永3年頃は、二代と三代との間の画期の年代とは一致せず、100年前後の差があります。初代墓造立の延宝3年にすでに規制が始まっていたにもかかわらず、規格外品が持ち込まれたということは、「富山藩主墓」という特殊な理由のためと推測されます。 |
(古川) |