富山藩主 前田家墓所 長岡御廟所の調査
4.墓所の石造遺物
(2)寄進燈籠
2.特色
 
寄進燈籠は、各代ほぼ1つの型式で、十一代利友のみ2つの型式があります。
燈籠の基礎が地中に埋まっているため、基礎の反花部分から上を計測し比較してみました。全体高は、当初作られた利次墓は67.1寸、その後は63寸から68.5寸で、平均は66.7寸です。部位別の高さについては、表に示しました。
 
表 寄進燈籠部位別高さの推移(単位 寸)
部位/代数 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11(1) 11(2) 平均
宝珠 12.5 13 13 12.1 14 13 11 11.2 14 11.5 12 12 12.4
9 9.7 8.7 9.3 8 8.5 9.5 10 8 7 7.5 7.5 8.6
火袋 9 9.2 9.6 9 9.5 9.5 9.5 9.5 9.5 9.8 9.5 9.5 9.4
中台 7 7 6.7 6.7 7 7 6.5 5.5 6.6 6.5 7 8.5 6.8
竿 25.1 25.3 25.5 25.6 26.2 26.5 26 26 25.5 25 25 25.2 25.6
基礎(反花高) 4.5 4 2.8 4.8 3.2 4 4 4.5 4.3 3.2 3.5 3.7 3.9
67.1 682. 66.3 67.5 67.9 68.5 66.5 66.7 67.9 63 64.5 66.4 66.7


各部位の特徴

【宝珠】 丸みをもち、先端が尖っています。五代では縦に長く、七代・八代ではつぶれた形にになります。請花は単弁と二重の弁があり、単弁が主体です。蓮弁は開くもの6型式、窄まるもの3型式があります。二重の弁は、六代・七代・九代で、九代のみ複弁です。伏鉢は円形が主流で、九代のみ方形です。

【笠】 四隅の稜が反り(起り)、軒反りのないものが主で、軒反りは初代・三代のみ認められます。伏鉢を載せる頂部の形は、正方形から、九代以降は径8寸の円形に変化します。

【火袋】 2段に彫った大きな火口を設け、火口内側の段が三代以降隅丸方形が多くなります。火口両側面は円窓・三日月窓が一対になるものが主で、三代・九代は両面三日月窓です。

【中台】 火袋受座は無文無段、下半の蓮弁(請花)は、単弁で、主弁8弁×2段+間弁8弁の計24弁です。主弁の先端は外反し、主弁・間弁の先端に窪みを入れるものと入れないものに分けられます。主弁の厚さは時期の経過とともに薄くなり、間弁の造形が省略される傾向にあります。

【竿】 円柱形で、径1尺以内、長さは2.5尺から2.65尺です。中央に大きく「奉献上○○院殿御廟前石燈籠一基」、右上に小さく年号・干支、左下に小さく日付・寄進者名を彫るという形が踏襲されますが、七代のみ「奉献恭徳院・・」となり、「上」の字を欠きます。年号・日付は、初代利次が一周忌の年月日となっている以外は、藩主の没年月日です。

【基礎】 反花は、中台の請花と共通した特徴をもち、八代以降は共通性が見られなくなります。

基礎下半の高さは約15cm前後です。

なお、この寄進燈籠各部位の変遷は、おおよそ墓前燈籠の変遷と似ているようです。
(古川)