けつ状耳飾(1) 初めて完全な形で出土
 
小竹貝塚からは、これまで数十点のけつ〔王へんに夬〕状耳飾の出土が確認されています。
製作途中のものが数点あるほかは、完成した製品で、いずれも半分におれたものばかりでした。これは、けつ状耳飾が「滑石かっせき」というモース硬度1の軟らかい石を使っていること、折れた部分は最も細い部分であるためです。

平成20年度の調査で出土した貝層の土を洗ったところ、折れた状態のけつ状耳飾2点が、なんとぴったり接合し、完全な形のけつ状耳飾1個が完成しました。たぶん、小竹貝塚では初めての出土と思われます。

大きさは、たて3.5cm、よこ4.2cmで、やや横長の楕円形です。中央上部の穴の径は1.0cm、切り目の長さは1.4cmです。断面はかまぼこ形で、厚さ5.5mmです。

このような型式のけつ状耳飾は、藤田富士夫氏の分類視点(藤田1989年)により、おおよその年代を求めることができます。
型式率=切り目の長さ÷側縁幅=0.93
この数値は、前期中ごろから後葉に営まれた平岡遺跡・蜆ヶ森貝塚のけつ状耳飾のデータに近いといえます。中ごろと後葉の大きな差は、全体が横長から縦長へ変化していく傾向にあるということで、このような視点から見ると、けつ状耳飾の年代は、中ごろから後葉にかけての過渡期前後と考えることができます。
 
《参考文献》
 藤田富士夫 1989年 『考古学ライブラリー52 玉』 ニュー・サイエンス社
(古川)
完全な形のけつ状耳飾
完全な形のけつ状耳飾