シリーズ縄文講座(12)
不思議な出土品 
【岩版】
 
岩版がんばんとは表、裏に模様が彫込まれた方形や楕円形の石製品で、凝灰岩ぎょうかいがん等の軟らかい石材を使用して渦巻きや三角形・円形のなどの幾何学的文様きかがくてきもんようや顔を彫込んだものです。文様は左右対称になることが特徴です。これらは縄文晩期の東日本、特に東北の亀ヶ岡文化に多くみられます。
岩版は縄文時代の呪術や儀式の用具であったとみられ、土偶・土面・土版・石棒などとともに精神文化を示す道具とされます。
北代遺跡の岩版は、斜面地の粘土採掘穴跡から多量の土器・石器・食物残滓(骨や木の実)などの遺物とともに出土しました。
残存する大きさは、長さ8.7cm、幅7.2cm、厚さ4.7cmで、全体を復元すると、長さ16cm以上(約20cmほどと推定)、幅約13cm、厚さ6cm以上があり、大型の部類に含まれます。
表面の文様は、Y字状の線・円形・三角形の彫込みで構成され、2段目の文様はY字状と円形の組合せです。三角形の彫込みは側面にのみあります。
岩版
岩版
右【北代遺跡出土】
左【元屋敷遺跡出土】
このような大型岩版の類例は、新潟県北端の朝日村元屋敷遺跡にあります。元屋敷遺跡の岩版にもY字状の文様があり、共通した特徴を示します。元屋敷遺跡やその周辺からは富山、石川で製作した縄文土器が出土していることから、直接的な交流があったとみられます。このような交流の過程で北代遺跡の岩版が製作されたと考えられます。
類似した岩版は、小矢部市桜町遺跡でも1点出土しています。円形の大きな窪みと直線・三角形の彫込みで構成され、北代遺跡よりも単純な文様で、顔を表現をしたようだとされています。
これらの岩版は、亀ヶ岡文化の影響を受けた最西端の出土例として注目されます。