シリーズ縄文講座(9)
縄文時代の年代を科学的に測る
 
遺跡がいつ頃営まれたかを表すには2通りの方法があります。ひとつは発掘調査によって掘り下げた土の層の堆積たいせき状況と、土器の形などを比較した「編年へんねん」という方法を用いた「相対そうたい年代」で、「縄文時代中期中葉」などと表されます。これは見つかった土器や石器などの特徴を形・素材・作り方などから分類し、新しいか古いかで順番に並べていき、その変遷へんせんの状況からいつ頃のものなのかを表す方法です。
もうひとつの方法は「今から●●年前」というように、具体的な数字で表される「絶対ぜったい年代」です。絶対年代を調べる代表的な方法が炭素を用いた「放射性炭素ほうしゃせいたんそ年代測定法」です。自然界の炭素には、重さが異なる炭素12・炭素13・炭素14という3種類の原子が混ざっています。空気や生きている生物には、放射性の炭素14がわずか(炭素原子1兆個につき1個程度)に含まれていますが、生物が死亡して呼吸が止まると、体内で炭素14が一定の割合(5730年間で半分の量になります)で減少していきます。この性質を利用して生物の遺体や炭化物の中に残っている炭素14の濃度から、生物が死んで何年経過したか(何年前の資料か)がわかるのです。
放射性炭素年代測定法の中でも、「AMSエイエムエス法」という測定技術の進歩によって、より精密な年代を調べることができるようになりました。従来の方法「ベータ線計測法」では、測定に炭素1g以上が必要なのに対し、この方法では1mg以下のわずかな炭素の量で測定が可能となりました。そのため、貴重な文化財を壊さずに測定できるようになり、対象となる試料の種類が大幅に広がりました。
最近ではまた、土器についている「おこげ」から、年代を測定することが可能になりました。 「おこげ」は土器が煮炊きに使われていた時に付いた吹きこぼれや焦げ付きの跡で、付着する量が少ないため、これまで年代測定がなかなか困難でした。新たな科学技術の進歩により、「おこげ」から土器が実際に使われた年代を調べることが可能となりました。
このような科学的な方法を利用して、土器編年の年代を再検討する研究が進められています。
土器の外面 土器の内面に付着した「おこげ」
土器の内面に付着した「おこげ」(矢印部分)
開ヶ丘狐谷V(ひらきがおかきつねだにさん)遺跡出土】
※おこげを分析した結果、この土器は約4800年前に使われていたことがわかりました。