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 10月にバンコクへ弾丸出張をした。講演のため0泊3日で出かけてきたのだ。9日の最終便で羽田空港に入り、深夜の便で出国、現地時間10日の早朝5時にタイに到着、市内のホテルで休憩の後、2時間ほど移動してフォーラム会場に到着、14時から18時頃まで会議に参加、終了後空港に向かい、22時5分発の羽田便に搭乗、11日の6時15分に帰国、富山便で8時55分に富山空港に到着という日程。まるで日帰りのような無茶苦茶な出張であった。1泊もしないのだから着替えも洗面用具もなし。スーツケースを預ける必要もない。まるで隣町に出かけるみたいな身軽な装いで終えたのだった。さすがに0泊という海外旅行は今までに機会がなかったと思うけれど、預けた荷物が無いだけに到着後の移動がたいへんスムーズで良かった。
 
 海外旅行の際はスーツケースを飛行機に預けることが普通だろう。そして目的地に到着した後、荷物が出てくるターンテーブルで他の乗客と一緒にイライラしながら自分の荷物が出てくるのを待つことになるのだ。その際、ごく(まれ)にトラブルが発生することがある。僕も今までに何度か困ったことに遭遇している。例えばニューヨークの空港で同行者のスーツケースが壊れて出てきたことだ。預けた時には何ともなかったのに、出てきたときはキャスターが取れているうえに、バッグに穴が開いていた。かなり乱暴に扱われたのだろう。重い荷物をみんなで抱えて移動し新しいバッグを買う羽目になったことを記憶している。
 
 次は、ロンドンの空港で同行者のバッグが出てこなかったというケースである。この時は二人の同行者のバッグが見つからなかった。係りの人に調べてもらうと、一つはターンテーブルに乗せ忘れられたもので、バックヤードで見つかった。ところがもう一つの方が見当たらない。随分と待たされた挙句(あげく)、出発地の空港に残されていることが分かった。()(こく)の便に乗せホテルまで届けるという係員の言葉に従うしかなく、僕らはホテルに移動し、食事やお酒を楽しみながら待っていたのだが、いつまで待っても届かなかった。やがて睡魔に(こう)しきれなくなり、僕の荷物から下着やパジャマ代わりのものなどを同行者に渡し眠りについたのだった。翌朝、同行者が深夜に荷物が届いたと報告してくれ、みんなで拍手をした記憶がある。
 
 また、成田空港に帰国したものの荷物がハワイの空港に積み忘れられていたというケースもあった。このときは数日後に同行者の自宅に送られるのを待つという結果になった。   
 
 海外旅行にはいろんなリスクが(はら)むものだが、得難い体験を何度かできたことはある意味では良かったなと思っている。
 
 荷物が行方不明になった際に、必要となる衣類や洗面用具などを購入した費用を後日支払ってくれるという保険がある。あるエッセイで、筆者がトラブルに遭遇し、この時とばかりに高額な衣類を買ったものの保険に入り忘れていて大失敗をしたというエピソードを読んで、ああそうなのかと気付き、それ以降はこの種の保険に入ることにしている(前述のバンコクの出張には必要がなかったけどね)。
 
 市の政策参与でもある建築家の(くま) (けん)()さんはいつも世界を飛び回っている人だが、以前に、基本的には機内持ち込みバッグだけで出張をしていて、飛行機にスーツケースを預けないと語ってくれたことがある。いったんトラブルが発生すると自分のスケジュールが狂い、多くの人に迷惑をかけるからだと説明してもらった。大物の出張は前述の保険などとは無縁の別次元なものなのである。世界的建築家は(すご)いなあ!小さな携行荷物だけでどうやって済ますのだろうか?謎である。