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アーティストインタビュー 2

 

第2回 岸 厚男さん (ガラス作家)


多少の計算違いは認めるぐらいの、大らかさがないとガラス作家は続けていけないと思いますね



(制作の様子を見て)アシスタントなしで全部最後まで作るなんてすごいですね。

いや、別に普通ですよ(笑)。少し特殊なツールを使えば、ヴェネチアのレースガラスのような複雑なものだって、一人でできちゃう。個人工房で制作している作家は、基本的に一人で作品を仕上げるのは常識ですから。アシスタントを付ける方が珍しいかもしれませんね。


そういえば岸さんは、富山に個人工房を建てて最初に独立したんですよね。工房を建てる時に最初ということで苦労した点はありますか?

うーん、どうでしょうね。ただ、もちろん全部自分で設計して、建てましたけどね。業者に頼むと3倍から4倍経費がかかっちゃうから。富山で最初といっても、県外の知り合いには既に工房を建てて活動している人がいましたから、そういう人たちに話を聞いたりして、いろいろと参考にしましたね。そんな中で、自分のオリジナルのアイデアを窯の設計に盛り込んだりしてね。でも今思うと、窯の出来は100点満点でいうと、80点ぐらいかな。使っていくうちにいろいろと不便な点も見えてきましたからね。もし窯を壊して作り直せるものなら、正直作り直したいですね(笑)。

ゼロからスタートして、工房の稼動にはどのくらい時間がかかりましたか。

実質5ヶ月間かな。もちろんその前に、図面引いたりとかする期間がけっこうあったんですけど。工事を始めたのは1996年の10月ごろからで、完成したのは翌年の3月ですね。当時はまだ富山ガラス工房のスタッフをやっている時で、仕事が終わった後や休日を利用しながら少しずつ造っていきました。けっこう大変でしたが、富山ガラス工房を辞めたらすぐにこっちに移って仕事を始められるようにと思ってね。

岸さんの作品のことに話が移るのですが、今はキャストと吹きガラスと、両方の仕事をやってらっしゃいますね。ご自身では、キャストと吹きガラス、どちらの仕事に魅力を感じますか?

そりゃあ、断然キャストですよ。吹きガラスは経費もかさむし、正直いって生活していくという問題がなければ吹きガラスなんてやってませんね(笑)。もちろん吹きガラスにもそれなりの魅力はあるんでしょうが、キャストの方が、自分の性に合ってる気がしますね。

あらかじめフォルムやガラス素材について細かい計算や下準備を施して制作に臨めることがキャストの特徴の一つだと思うんですが、ひょっとして岸さんは最初の計算どおりに行かないと気がすまないタイプですか?

いや、とんでもない(笑)。まあ確かに、そういう性格の人っていますけどね。でも僕は違いますよ。計算どおりに行かない部分が最終的に形として現れても、計算が違ったことに対してイラついたりはしませんね。そんなことでいちいちイライラしていたら、神経が持たないですよ(笑)。ガラスってのは人の手を離れたところで形を変容させていきますからね。真面目な話、多少の計算違いは認めちゃうぐらい大らかな心がないと、ガラス作家は続けていけないと思いますね。

(2005年11月、KISHI GLASS STUDIOにて)

岸 厚男
1958年愛知県生まれ。82年、武蔵野美術大学卒業。94年、富山ガラス造形研究所造形科卒業後、富山ガラス工房スタジオスタッフを経て、97年に個人工房KISHI GLASS STUDIOを開設。05年、国内最大のガラス公募展『国際ガラス展・金沢 '95』で大賞を受賞。以後も個展やグループ展で精力的で作品を発表中。工房ではアマチュアを対象に、吹きガラスの制作講座も実施している。

KISHI GLASS STUDIO
富山県富山市東老田773
TEL・FAX 076-434-5251