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mark.gif 第二十六号
平成11年3月5日
収蔵品紹介  ●富山市の鉄道100年
●おさんぽ城址公園〜鉄道編〜



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収蔵品紹介
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『富山名所 停車場』
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 明治42年に発行された色刷版画です。
現在地に移転開業した富山駅の様子が描かれています。
後方には神通鉄橋と呉羽トンネルが見えます。

 富山駅が開業してから、今年でちょうど100周年を迎えます。
博物館ではこれを機会に、「富山市の鉄道100年」と題して、富山市に敷設された鉄道の歴史と、さらに鉄道が富山市の発展にどのように関わってきたのかを貴重な資料とともにご紹介しています。
 今回は、現在開催中の、この特別展の概要をご紹介します。




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鉄道の開通と全国鉄道網
富山市に鉄道を敷設する計画は、明治14年の東北鉄道を始めとして数多く立てられました。
しかし、いずれの計画も、発起人間の意見の相違や資金不足などの理由で実現することはありませんでした。
「鉄道敷設法」に基づく官設の北陸線延長によって富山駅が開業したのが明治32年3月20日のことです。
そして、大正2年の北陸本線の全線開通により、富山は関西・関東と結ばれ、更に昭和9年には高山本線の全線開通により中京圏とも結ばれたのです。
これらの開通により、富山は全国規模の鉄道ネットワークに組み込まれることになりました。

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地域鉄道網の拡大
北陸本線の全線開通を契機に、富山市を中心とした私鉄網が県内各地に延びていきました。
大正2年の富山電気軌道を始め、富山軽便鉄道、富山県営鉄道、富岩鉄道、越中電気軌道、富山電気鉄道と次々に開業していったのです。
これらの開業目的は、鉱山からの貨物輸送、水力電気事業の電源開発、観光客誘致など様々でした。
しかしいずれの鉄道も、富山市に産業の振興や沿線の都市化あるいは市街地の近代化を促すとともに、人々の生活に大きな変化をもたらしたのです。

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戦争と鉄道
富山電気鉄道の代表取締役であった佐伯宗義は、県内各都市を鉄道網で結ぶ、一県一市街化という壮大な計画を構想していました。
その実現に向けて、県下各私鉄を次々と傘下にいれていったのです。
その結果、戦時下の交通大統合という社会情勢の影響もあり、昭和18年には富山地方鉄道の名のもと、県下の私鉄が一社にまとまりました。
その後、富岩線(現富山港線)は大陸輸送の重要性から国に買収され現在に至っています。

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経済成長と鉄道
戦後復興が進む中、鉄道も戦前以上の発展を遂げ、旅客や貨物の輸送は増大していきました。
これに伴い、電化・複線化あるいは信号の自動化などの整備が進むとともに、新線計画も次々と立てられていきました。
しかし、その後の車社会の到来により、陸上輸送の主役の座を自動車に譲っていかざるを得なくなりました。
このため、鉄道は路線網を徐々に縮小していきましたが、最近では車社会の弊害や超高齢化社会の到来により、その役割が見直されて始めています。

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写真出典
(1) 田刈屋地内の富山駅 (「富山線写真帖」草卓人氏所蔵)
(2) 明治末の富山駅 (富山市郷土博物館所蔵)
(3) 富山電気鉄道竃{社社屋 (「高志の国わざ」草卓人氏所蔵)
(4) 開通当時の富岩鉄道 (「写真でつづる富山地方鉄道五十年の歩み」より)
(5) 昭和18年富岩線の国鉄移管調印式 (「写真でつづる富山地方鉄道五十年の歩み」より)
(6) 富山大空襲直後の富山市街 (「富山戦災写真帖」富山県立図書館所蔵)
(7) 富山操車場 (富山市郷土博物館所蔵)
(8) 昭和40年頃の切断前の越ノ潟堀切鉄橋 (「写真でつづる富山地方鉄道五十年の歩み」より)

このように、富山市の鉄道の歴史を4つのテーマに沿ってご紹介しています。
その他、富山駅および富山市内を走った鉄道に関するサボ(行き先表示板や駅名表示板など)や切符類も展示しています。
また、現在の路線上や廃線路に残る、鉄道の歴史を偲ばせるものを写真にてご紹介しています。
明治の頃のままの駅舎やレンガの橋脚、駅跡など、普段は気付かない所に、意外なものが残っているのです。

普段から鉄道に興味のある方も、そうでない方もこの機会に鉄道の歴史に触れてみて下さい。
意外と身近に感じられ、いつもは車でドライブという方も、今度の休日は電車に乗って出かけてみようかなという気になりますよ。
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神通鉄橋
明治41年架橋当時のまま現在も使用されている




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意外なことに、城址公園の中にも、富山の鉄道に関するものがあるんですよ。
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 まずはご存知の蒸気機関車です。
これは大正3年10月に川崎造船所で造られた9628号で、当時国産機関車のホープとして登場し活躍しました。
昭和9年以降は高山線や北陸線を、富山駅を中心に走り続けて、昭和45年に電化に伴い廃車となりました。
同年この機関車が国鉄から寄贈されることになり、城址公園内にホームが造られました。
以来、現在に至るまで、公園を訪れる子供たちの人気者です。
 次は佐伯宗義の銅像です。
佐伯宗義は富山の地方鉄道の充実に力を尽くした人物です。
この人物については展示の方でも取り上げていますので、そちらをご覧下さい。(「博物館だより第28号」参照)

共に、博物館と同じく城址公園の中にありますので、展示を見た帰りにでもお立ち寄り下さい。
公園のどこにあるか、お散歩がてら探してみて下さい。



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