富山市博物館基本構想

  平成15年3月  富山市博物館基本構想策定委員会


 富山市の博物館は、昭和29年の「富山産業大博覧会」開催を機に『富山市立郷土博物館』が設置されて以来、その機能を分化し、歴史・文化、美術系の郷土博物館、民俗民芸村などや、自然科学系の科学文化センターなど専門分野別の博物館群としての特色をもっている。今後ともこの特色を生かし、それぞれ専門別博物館の充実を図っていく必要がある。

 なかでも、郷土博物館(富山城)は、約50年を経過し、戦災復興期を代表する今に残る少ない歴史的建築物として、また富山市のシンボルとして、市民を始め富山を訪れる多くの人々に親しまれている。そこでこれを保存し、今後も博物館として活用するため、現在、構造的な耐震補強と併せて、障害者や高齢者に配慮した改修計画が進められている。

 本委員会では、この改修を契機として21世紀にふさわしい富山市の博物館像、特に郷土博物館の今後の整備にむけての指針として次の2点について検討し、提言を行なうものである。

  1.富山市の博物館の理念について
  2.歴史・文化、美術系博物館群の今後の方向性とそれぞれの役割について


  目次  基本理念
       整備の方向性
       基本的な整備について
       郷土博物館と民俗民芸村などの役割分担
       博物館構想の概念図
       富山市博物館基本構想策定委員会委員名簿
       富山市博物館基本構想策定委員会開催経過



 基本理念

  富山市の博物館は、それぞれの専門分野に基づき、資料収集に努め、それらから生まれた成果を広く発信してきており、今後もその充実に努める必要がある。
  これに加え、多様化する市民ニーズを的確に捉え、広範な市民や関係機関と連携した博物館活動を拡充することが重要である。
  このことから、博物館は、生涯学習の基盤整備と人々の生活の質を高めることに貢献し、市民のニーズに応えられる機能を備えた施設にすることを基本理念とする。
  この理念に基づいて、21世紀にふさわしい富山市の博物館像、特に郷土博物館については、『市民の視点に立ち、市民と共に創造し、共有する博物館』を目指し、次の3点を運営の柱とする。

1.市民共有の財産を、次世代に伝える
郷土博物館は、富山に関する歴史・文化、美術資料の調査研究を行い、それに関わる様々な資料を市民や地域とともに収集保存するように努めている。


2.市民共有化のため情報を、発信する
郷土博物館は、調査研究の成果、収集資料などの博物館情報を広くその公開、提供に努める。


3.市民と共に新しい価値を、創造する
郷土博物館は、学校教育、社会教育機関など関係各機関や市民と連携して、国際化、情報化、少子高齢化など時代ニーズに対応し、新しい市民文化の創造に資することに努める。

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 整備の方向性

  基本理念に沿った富山市の歴史・文化、美術系博物館の整備の方向性は次のようになる。


1.改修後の郷土博物館(富山城)は、その特性を生かし、富山城をテーマとした専門博物館とする。

2.富山市全体の歴史・文化を通観できる総合的な展示及び企画展示施設を整備する。

3.歴史・文化、美術系博物館の運営において、市民のニーズに応えうる機能的、効率的な組織とする。

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 基本的な整備について

  富山市の歴史・文化、美術系博物館整備の方向性を踏まえた今後の整備は次のとおりである。


1.富山市の歴史・文化系博物館の整備
(1)総合的展示
 富山市全体の歴史を総合的に通観するため、「総合的展示」を常設する必要がある。これにより、富山市の歴史的流れを示すだけでなく、各専門別博物館の展示を全体の歴史の中で捉えることを可能にし、より広い視点での歴史的理解を促す。

総合的展示館と専門博物館の相関図

(2)企画展示
 博物館は、市民文化の創造に資するため、テーマ性をもつ企画展示が可能な施設を確保する必要がある。
(3)中核的機能
 総合的展示の施設は、各専門別博物館と密接な連携を図り、周辺関係施設や市内に残る文化財などの調査研究・情報センターとしての中核的機能を担うことが必要である。

 以上の機能を果たすためには、改修後の郷土博物館(富山城)だけでは、不可能である。しかし、場所については、学校教育、富山を訪れる観光客なども考慮すると、都市の中心に位置し、歴史性のある城址公園がふさわしいことから、郷土博物館(富山城)に隣接して増築棟を設置することが不可欠である。
 この場合、改修後の郷土博物館(富山城)は、その外観の特性を生かし、富山城を紹介する専門博物館とし、増築棟と連携した施設とすることが望ましい。

なお、富山大空襲に関する展示については、富山市の歴史の1ページとして紹介することが必要であるので、そのスペースは、総合的展示の中で確保することが望ましい。

2.美術館機能の位置づけ
 郷土美術を対象とした美術館機能については、市が独自に対応する必要があり、この機能は、郷土博物館が開館当初に担っていた経緯、また、富山の歴史・文化と密接であることから、郷土博物館に位置づけることがふさわしいと考える。
 その展示スペースは、増築棟で確保することが望ましい。

3.博物館の運営と市民参加
博物館は、地域における生涯学習の発展に寄与するとともに、社会の進展に対応し、様々な情報を発信することにより、人々の知的関心に応えられる施設であることが求められる。
ことに市民が地域の特色ある文化を尊重し、一体となってまちづくりを推進するため、自分たちの歴史・文化の理解を高める役割が重要である。

4.人材の確保と利用の活性化
(1)専門職員の確保
業務内容の専門性が高度であり、施設の数も多いことから、学芸員を含めた専門職員の確保と資質向上が必要である。また、資料や情報の市民共有化と併せて、学校教育にも使い易くするため、教職員との合同によるセルフガイドの作成など関係する様々な機関・人材との連携を図る必要がある。
(2)利用者増加への対応
利用者増に向け、次の対策が必要である。
     @観光バスを含めた駐車場の確保に努める。
     Aより一層のP・Rに努力する。
(3)名称の検討
新しい博物館は、改修後の郷土博物館(富山城)、佐藤記念美術館、及び増築棟で構成されることから、「館」の名称について検討することが必要である。

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 郷土博物館と民俗民芸村などの役割分担

  基本理念を具体化するために、今後の郷土博物館と民俗民芸村などとの役割分担は、次のとおりである。

  1. 郷土博物館は、歴史・文化、美術系博物館の中核館として増築棟を建設し、総合的展示と企画展示、及び郷土美術の展示を行い、併せて博物館資料・情報のセンター機能を担当する。

  2. 郷土博物館(富山城)は、富山城の専門博物館とする。

  3. 佐藤記念美術館は、茶道・古美術を中心とした専門博物館とする。

  4. 民俗民芸村は、民芸・美術、歴史・民俗など個別の専門博物館が集合した集落型博物館群とする。

  5. 北代縄文広場は、史跡公園であることから体験機能を取り入れた屋外型のテーマ施設とする。

  6. 浮田家住宅、森住宅などの文化財は、地域に親しまれ、周辺環境と一体となった保存活用型の文化財とする。

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 博物館構想の概念図

郷土博物館 富山城 専門博物館 富山城の歴史関係
増築棟 総合的展示 ・総合的展示(大空襲の展示を含む)
・企画展示
・郷土美術の展示
・資料情報センター
佐藤記念美術館 専門博物館 茶道・古美術関係


民俗民芸村 民芸館、民芸合掌館、陶芸館、茶室円山庵、民俗資料館、売薬資料館、考古資料館、篁牛人記念美術館、とやま土人形工房 専門博物館群(集落型)) 民芸・美術、歴史・民俗関係
北代縄文広場 北代縄文広場 屋外型テーマ施設 史跡公園内 テーマ施設
文化財 浮田家、森家 保存活用型文化財 周辺環境一体型

富山市の博物館相関図

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富山市博物館基本構想策定委員会名簿

役職名 氏名 選出母体
会長 楠瀬 勝 富山市文化財調査審議会
職務代理者 久泉迪雄 富山市美術展実行委員会
委員 板倉フサ子 公募
委員 亀谷義光 富山市自治振興連絡協議会
委員 陶 智子 郷土博物館協議会
委員 相馬恒雄 富山市緑化審議会
委員 高木勝男 公募
委員 野崎 保 富山市PTA連絡協議会
委員 森 政雄 富山商工会議所
委員 山口松蔵 富山県博物館協議会

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富山市博物館基本構想策定委員会開催経過

第1回 平成14年2月20日(水)/市役所会議室
      ・委嘱状交付、委員紹介、今後の日程などについて協議

第2回 平成14年7月28日(日)/民俗民芸村研修室
      ・郷土博物館、佐藤記念美術館、民俗民芸村の各施設を視察
      ・視察結果について意見交換

第3回 平成15年2月25日(火)/市役所会議室
      ・基本構想(案)について検討、協議

第4回 平成15年3月25日(火)/佐藤記念美術館
      ・基本構想(案)について検討、協議
      ・市長への報告書の提出について


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