本丸の発掘
石垣内部出土の軟玉なんぎょく2

石垣内部から出土した軟玉(ネフライト)について、その後、ネフライトに詳しい台湾の中央研究院地球科学研究所の飯塚義之博士(理学)に調査を行っていただきました。
飯塚博士は、走査型電子顕微鏡による組織観察と、エネルギー分散型X線によるエネルギースペクトル分析を行い、日本各地のネフライト産地と比較を行いました。
1(本丸の発掘「石垣内部出土の軟玉」)で述べたように、周辺産地として、神通川上流の飛騨市、青海川・姫川周辺、白馬松川の3か所があります。
分析の結果、この石は、微細で繊維状の結晶を持ち、化学組成は青海川・姫川周辺から産出したものと一致することが明らかになりました。
この成果は、慶長期富山城築城の際、魚津の経田以東の海岸から漂石が採取され、城まで運ばれたことを裏付けます。
石は土塁の中から出土しましたが、このようなきれいな石は現在でも建物の縁側付近や庭園に敷砂利として使われることが多いことから、本丸の庭園や利長御殿の周囲において用いられたものと推定されます。
(古川)
電子顕微鏡による反射電子像、石表面のX線エネルギースペクトルの一例
電子顕微鏡による反射電子像、石表面のX線エネルギースペクトルの一例
 
宮崎海岸のネフライトと富山城出土のネフライトの科学組成
宮崎海岸のネフライトと富山城出土のネフライトの科学組成
【参考文献】
飯塚義之・古川知明・中村由克 2016.3 「富山城石垣土塁から出土したネフライト玉石の来源」 『大境』第35号 富山考古学会