三ノ丸の石垣石材(1)
 
本丸東隅角と三ノ丸を結ぶ朝陽橋の南側、三ノ丸の土橋上には、ベンチに転用された石垣石材があります。
石材は、長さ149cm(49寸)、幅65cm(21.5寸)、高さは39cm以上の長方体で、下部は土に埋っています。石質は安山岩です。
これは、図のB面が大面、C面が小面となる隅角石材で、C面の側縁には稜角から10cmから20cmの範囲に、細かいノミ加工が行なわれており、B・C面間の稜角が石垣稜線となります。 
三ノ丸の石垣石材実測図
三ノ丸の石垣石材実測図
D面は摩滅した円礫面が残り、原石が河川転石であったことを示します。この面には、縦方向に2つの未割矢穴が穿たれています。上面長4寸×幅2寸、深さ3寸、底面長2.5寸で、この大きさは、高岡城本丸土橋の石垣石材に見られる大きさとほぼ同じです。
A面には、B面側から穿たれた矢穴痕が存在しており、B面が割られた後、それを上面としてA面を分割したことがわかります。

この石材の大面(B面)には、長さ23cm(7.5寸)、高さ6cm(2寸)の刻印があります。刻印は横長の直線から4本の短い直線が一方向に間隔をあけて直角に延びるもので、これまでの調査では同形の刻印は確認されていません。この刻印の大きさは、慶長14年調達とされる本丸土橋石垣の小型刻印の大きさとほぼ同じであり、この隅角石がそれらと同時期に調達されたことを示しています。

このような整った形状をした石材を使用して築造する石垣隅角部は、算木積になるものと考えられます。金沢城石垣編年2期(慶長期)の隅角石は、表面をノミで整え、控え部には自然面を残す、稜線はやや丸味を帯びており、シャープさに欠けることが特徴です。このような作りはこの石垣石材と大変よく似ています。
(古川)
三ノ丸の石垣石材
三ノ丸の石垣石材
刻印
刻印 
  刻印拓影
刻印拓影