幕末期の富山城瓦

(1)二ノ丸二階櫓門の瓦

富山県立図書館に残る「櫓御門新絵図」には、富山城唯一の櫓建物である二階櫓門の立面図が残っています。

この立面図は精巧に描かれており、本瓦葺きの屋根に葺かれている瓦の瓦当文様の細部まで丁寧に書き込んであります。このことから、幕末頃の二階櫓門で使われていた富山城瓦のようすを知ることができます。

軒丸瓦の瓦当文様は、富山藩前田家の家紋である丁子梅鉢文です。

軒平瓦の瓦当文様は、左から右に流れる1本の唐草文となっています。これとよく似た軒平瓦の瓦当文様は、慶長期(富山城1期)にみられます。慶長期のものは中心付近のS字唐草から左右に蔓が延びる形で、絵図のものとは多少異なりますが、左右1.1cmの小さい幅に文様を概略的に表現すると絵図のような表現が一番近いといえます。富山城から出土している軒平瓦は、幕末期の千歳門軒平瓦(赤瓦)で、これには左右対称形の菊葉文が使用されています。また桟瓦の軒平部分には中心花弁+左右対称に延びる唐草文が施されており、いずれも絵図の表現とは大きく異なっています。

これらのことから、二階櫓門の軒平瓦は、慶長期以来の伝統的な唐草文を継承使用していたと考えることができます。

この瓦の性質は、残念ながら絵図から読み取ることはできません。いぶし瓦あるいは千歳門と同じ赤瓦と考えられますが、千歳門軒平瓦の瓦当文様は左右対称形の菊葉文であることからみて、おそらく銀色に輝くいぶし瓦であったと推測できます。
(古川)
「櫓御門新絵図」(富山県立図書館蔵)に表現された二階櫓門の瓦当文様の部分
「櫓御門新絵図」(富山県立図書館蔵)に表現された
二階櫓門の瓦当文様の部分
*富山県立図書館所蔵