城下町の発掘調査
一番町地区の調査(2006年度調査)
(4)「福澤屋」のこと

2006年の発掘調査では、上級藩士戸田氏邸内のゴミ穴から、文字の書かれた木札が5枚出土しました。そこには番号、「越中富山」、商品名、屋印(山印の下にイ)、「福澤屋」の屋号と名(角兵衛など)が一定の様式で書かれており、名前の最後には「殿」とあります。また裏面にも文字がありますが、まだ内容はわかりません。人名ではないかとみられる文字もあります。一番上に書かれた番号は5枚とも異なっています。

これが藩の鑑札とすると、通常発行元の役所名などの焼印や文字、年号などが記されますが、それが明確に見当たらないことから、商品の荷札(発送状あるいは納品状)などと考えることができます。木札には「殿」とあることから、福澤屋あて送付された商品だとみられます。その商品は、2枚の木札に「大根」の文字が見えることから、大根であったことがわかります。

「福澤屋」は、青果商として江戸期から続く商家で、久世家を名乗ります。発掘調査地とは、北陸街道をはさんで向かい側の二番町に、河上金物と並んで店があったとされています。

この福澤屋宛ての荷札とみられる木札が、複数枚戸田邸のゴミ穴から発見された経緯は不明です。福澤屋が手配した青果が、そのまま近くの戸田家に納品されたことを示すものと推定されます。

今後文字の解読を進め、この木札の性格について明らかにしていきたいと思います。
(古川)
福澤屋と書かれた木札(赤外写真)
福澤屋と書かれた木札(赤外写真)