富山城の割石技術
(7) 石面のさまざま

石垣面にみえている石の表面を石面いしづらといいます。この石面は縦横ともに50cmに満たない広さしかありませんが、実は石垣内部に隠れた奥行(控えと呼ぶ)のほうが2、3倍以上長いのです。築石の小さい面は小面こづら、広いほうの面を大面おおつらと呼び、通常は小面が石面となります。

この石面は、最初から意識してきれいな割面になるように割る工程に組み入れられているものが多いといえます。

このほか、自然の礫面が平坦になっているところをそのまま利用するもの、自然面をゲンノウやノミで加工し、小さな平坦面をつくり出すものも少なからず見受けられます。

石割りの際、変形して複数の平面ができた場合、割面の一つに刻印が入れられているものがあります。この刻印は、石垣を積む際最も石面に適した平面を示すために刻まれた印と考えられます。

富山城の石垣には、築石の大面を石面とする特殊な積み方をしている部分があります。鉄門石垣の通路面に配置された鏡石の周囲には、大面を石面とした石がM字状に配置されています。また、北東隅下半部では角脇石の隣石を大面にしています。

このように大面を石面にするような積み方をすると、控えの長さが短くなり、石垣としての安定度・強度の低下を招くことになります。それにもかかわらず広い大面を石面としたのは、石を見せて何らかの効果を狙ったものと考えられます。
(古川)
石面と自然面とに+の刻印
石面と自然面とに+の刻印