富山城の割石技術
(6) 石を割る3分割順序

富山城で使用される築石に6種類の割り方があることは、富山城の割石技術(5)石を割る2分割方法の通りです。解体調査によって築石の割り方だけではなく、割る際に順序があることも石に残る矢穴痕からわかってきました。

二分割・四分割には小面→面と大面→小面の順で割る2種類の方法があります(図1)。
 
模式図(二分割) 模式図(四分割)
    二分割  四分割
図1 模式図

二分割

【小面→大面の順で割る場合】
1. 石を輪切りにするように片端に矢穴をあけて割り、小面となる平面を作ります。
2. 石の長い方に矢穴をあけて割る(大面ができる)と2つの築石が確保できます。割られた石には自然面から入れた矢穴痕が2箇所に残ります。


【大面→小面の順で割る場合】
1. 石の長い方に矢穴をあけて割り、大面となる平面を作ります。
2. 割面に矢穴をあけて割り、半月形の小面を作ります。石には自然面から入れた矢 穴痕と割面から入れた矢穴痕が残ることになります。


ただし、小面を作る方法には他に
A. ゲンノウで小割りする方法 
B. 割らずにそのまま使う方法

が認められます。これらは作業工程を省略化した ものと考えられます。
二分割
【大面→小面の順で割る場合】 
1.段階
四分割
 【大面→小面の順で割る場合】
 2.段階

四分割A

【小面→大面の順で割る場合】
1. 石を輪切りにするように片端に矢穴をあけて割り、小面となる平面を作ります。
2. 石の長い方に矢穴をあけて割る(大面ができる)と2つの築石が確保できます。
3. 割面を上にし、長い方に矢穴をあけて割ります。自然面から2箇所+割面から1箇所・割面から1箇所矢穴痕の残る石が各2個できます。


【大面→小面の順で割る場合】
1. 石の長い方に矢穴をあけて割り、大面となる平面を作ります。
2. 割面を上にし、再度長い方に矢穴をあけて割ります。
3. 割面に矢穴をあけて割り、扇形の小面を作ります。自然面から1箇所+割面から2箇所・割面から2箇所矢穴痕の残る石が各2個できます。 

石割りは、築石を納めるまでの期間・割る石の大きさや状態・職人の好みなどが混在し、その時々で変化するものと考えられます。
(鍋谷)