富山城の割石技術
(2) 石目を見る
 
富山城の石垣石は、高岡・氷見産の砂岩を除き、丸い川原石を使っています。このため、石切丁場で切出す石と異なり、石の割りやすい方向(石目)を把握するのは難しいといえます。

丸い石といっても、石の表面には節理と呼ばれる亀裂が走ったり、平らな面が残ったりしているので、これらを手がかりに石目が推定できます。しかし、花崗岩の場合、石目は一定方向だけでなく、2方向から3方向が混在する場合があり、必ずしも節理方向と石目が同じとはいえません。
石目の判断を間違うと、割っている途中で急に別方向に向けて割れ、目的とする製品が取れない場合があります。したがって、職人は、まず表面観察で一度石目と推定される方向を見定めて割ってみてから、真の石目を見極めます。

石目に沿って割れた面は、凹凸が少なく、築石石面に適した平面ができます。一方、石目に直交する面は、凹凸ができ、きれいな平面となりません。石工仲間では、石目に沿って割れたきれいな面を女面、でこぼこのできる石目と直交する面を男面と呼んでいます。

石目と直交する面は割りにくく、凹凸を少なくして割るためには、矢穴の深さを深くして、じわじわと時間をかけて叩いて割るようにします。一つの石に見られる複数の矢穴列を観察すると、石目方向の矢穴の深さは4cmから6cmになるのに対し、石目と直交する矢穴は、6cmから10cmと深くなるものが多いことがわかります。

また角石では、石目方向であっても矢穴の間隔を狭くし、矢数を多くする傾向があります。これは角石の命である平面を確実に深くまで確保するためと理解されます。

安山岩にもやはり石目があり、花崗岩同様石目を意識した石割が行われているようですが、細かな分析は今後の課題です。
(古川)
石割風景
石割風景
失敗した石割
失敗した石割