富山城の石材
Stone wall of Toyama castle site
(3) 帯磁率調査の成果
Result of stone magnetic susceptibility investigation
2.花崗岩
Granite
 
富山城石垣に使われている石材のうち、約7割は花崗岩類です。
富山県では東部山地に花崗岩類が広く分布していて、10万分の1富山県地質図(藤井ほか1992)では、7種に大別されています。これら花崗岩類が早月川・片貝川・黒部川へと流れ出し、扇状地の河川敷においても大きな玉石を獲得することができます。
 
花崗岩石垣石材 比較
花崗岩石垣石材
:本丸搦手石垣の花崗岩割石(江戸時代)
:平成18年修理工事の際早月川から調達した新補石材

富山城石垣に使われている花崗岩類のうち最も多いのは、桜色や白色の中粒花崗岩類です。これらは、早月川の上流に広く分布する「早月川花崗岩」です。
また、数cm以上の暗色包有物を含むものは、立山の大熊山から大日岳、奥大日岳にかけて分布する「大熊山花崗閃緑(せんりょく)岩」です。これも少ないですが、石垣に含まれています。このほかに、閃緑岩・片麻岩がみられます。

これらの花崗岩類の帯磁率の値は、個々に比較するとバラつきがあり、産地を特定することはできませんでした。
長さんは、ヒストグラム(度数分布)という統計方法を用い、石垣での帯磁率ヒストグラムは産地でのそれと一致するであろうと考えました。
 
富山城鉄門石垣と早月川の花崗岩の帯磁率ヒストグラム   富山城鉄門石垣と片貝川の花崗岩の帯磁率ヒストグラム
表1 富山城鉄門石垣と早月川の花崗岩の
帯磁率ヒストグラム
  表2 富山城鉄門石垣と片貝川の花崗岩の
帯磁率ヒストグラム

富山城の鉄門石垣A面とB面に使われた花崗岩類107石での帯磁率ヒストグラムは、早月川でのそれと一致しましたが、片貝川でのそれとは異なりました。これにより、富山城の花崗岩は、早月川流域からもたらされたことがわかりました。
 
参考文献 藤井昭二ほか編1970『富山県地質図』『富山県地質図説明書』富山県
(古川)