富山城の整形技術
(6) 小鍛冶

職人にとって道具はなくてはならないものです。自分に合った道具にするため、また大事な道具の手入れをするために鍛冶屋の仕事をする必要があります。今回、先の丸くなったノミ・クサビを作り直す様子を見学できたので紹介します。
作業は以下のように行われました。

1. 中央が窪んだ円形の鍛冶炉の中で小枝を燃やします。鍛冶炉はホースで送風機とつなげてあります。

2. 鍛冶炉にコークス(木炭)を入れ、温度をあげていきます。送風機から空気を送り、火力をあげます。

3. 高温になったところで、ノミを2から3本ずつ先端から半分ほどまで10分程度差し入れます。この時、鉄鉗かなばしと呼ばれる大きなはさみのような道具でノミをはさみます。

4. ノミが真っ赤に焼けてきたら取り出し、カナトコの上で叩いていきます。カナトコは片側に三角の突出があるアイロン台のような道具です。もし、傷がカナトコの上にあるとノミにも傷が入ってしまうので、決して傷をつけてはいけません。傷がノミに入るとポキンと折れてしまうからです。熱く焼けたノミは、鉄鉗ではなく竹筒を差し込んで取り出す工夫がみられました。

金槌は、六角形のものと、後部が釘抜きになっている殴打面積の小さいものの2種類を使い分けます。最初は六角形の金槌を使い、竹筒を回しながら先端を叩きます。ノミの先が鉛筆のようになるまで叩く→冷ます→加熱する作業を繰り返します。焼けたノミを叩くと鍛造破片が飛んできます。この破片をあまり出さない人ほど腕が良いそうです。

一度冷ました後、サッと水につけたノミをもう一方の金槌で竹筒を回しながら叩き、先端を六角形に作っていきます。先端の作り方は人それぞれで、自分の使いやすいように仕上げます。冷ましてから水につけるのは、すぐ水につけると硬く仕上がるものの、脆くなるという欠点があるからです。これを「焼き冷まし」と言います。

5. 冷ましたものをもう一度火の中に入れて焼き、オイルに浸します。オイル焼きをすると、硬さと粘りを出すことができる上、細かい温度変化にそれほど気を配る必要がないという利点があります。水では急に温度が下がるため、硬くはなっても粘りをだせず、すぐに折れてしまいます。粘りも出そうとすると温度加減が難しいので上手くいくとは限らないのです。

6. ノミを取り出し布で綺麗にオイルをふき取り完成です。


小鍛冶はあまり明るいと焼きがわからないので、やや暗い方が作業に適しています。また、人それぞれに流儀があり、作業していく中で自分に合った方法・道具の作り方を見つけていくそうです。
(鍋谷)
小鍛冶作業風景
小鍛冶作業風景