富山城の整形技術
(2) ノミによる整形

石の形を整えるのに使用するノミは、先端が尖った断面円形のノミです。太さや長さは、石工により異なり、用途に応じ2から3種類のノミを使い分けます。

ノミによる整形は、ハツリと筋ノミの2つに大別されます。

ハツリは、1回の打撃で石の突出部を小さく除去する手法です。力や角度、ノミ先端の形状により、割り取られる剥片の大きさ・形状が異なるわけですが、概ね貝殻状の剥片が石から剥離され、浅い窪みができます。ハツリは、1回ごとにノミ先の位置を変えて、石の高くなった部分全体を除去していく手法です。

ハツリは主として角石の表面(大面・小面)を平らに整形するために用いられます。整形は大面・小面のほぼ全面に及び、角石では上面・下面ともハツリが施される例が多くみられます。角石整形のハツリでは、2cmから5cmほどの浅く小さな剥ぎ取り面が形成され、稜を除去しながら平面に仕上げていきます。

石と石の合端を作るためのハツリは、築石の上面や側面に見られるものが多く、石を据え付ける際に施されます。この場合のハツリは概して深く大きな剥ぎ取りとなり、平面に近づけるという意識は少ないようです。角石の場合の合端ハツリは、上面と下面の算木積による角石の接する部分に施され、鉄門石垣西石垣では、角石の上面・下面の両面共に合端ハツリが施されます。角脇石の上面にも同様に合端ハツリが施される例が多いといえます。

角石では、同一面に平面整形のハツリと合端ハツリが共存している例が多く認められます。この場合の観察では、平面整形のハツリは細かく、合端ハツリの大ぶりなハツリと明瞭に区別されるようです。

筋ノミは、連続して直線状にハツリを行うもので、ノミ先の痕跡が直線になって残ります。これを平行して幾筋か行うことが多く、全体に及ぶ場合には五月雨状のきれいな平行線となって仕上がり、装飾効果を示すことにもなります。

筋ノミは、ハツリに比べ抉る深さが深いという特徴があります。

ハツリと筋ノミの相違は、現在は飛ばす石の稜の高さにより、低いものはハツリ、高いものは筋ノミというように使い分けているようですが、富山城での築石の整形状況をみると、慶長期の築石には筋ノミがほとんどみられないことから、筋ノミ手法は寛文改修期以降に用いられた後出年代の手法とみられます。
(古川)
ハツリ加工の様子
ハツリ加工の様子
角石上面が平らにされた合端合わせのハツリ加工
角石上面が平らにされた
合端合わせのハツリ加工