鏡石
鏡石のキズ

本丸鉄門石垣の東面にある縦長の鏡石は、相対する西面の縦長の鏡石(2006年に解体した鏡石)と同じ石から割り取られたことが分かっています。

この鏡石には、全面に筋ノミによる整形が行われており、平らに仕上げられています。
また表面を細かく観察すると、楕円形の小さな穴が5ヶ所あけられていることが確認できます。小穴は、石の左右に分散し、上下には3列認められます。列の間隔はそれぞれ約66cmを測ります。 穴あけ跡のある鏡石
穴あけ跡のある鏡石
当初この穴は、石を分割する矢穴を開けるため、石ノミの先端で掘り込んで割り付けた跡と考えていました。
しかし、よく観察するとこの小穴は、直径13mmから18mmの円形の穴が連続したもので、穴の深さは最大24mm、側面は垂直、底面は丸くくぼんでいます。穴が浅いものは2mmから3mmほどで、わずかにくぼむ程度です。

この形状から穴あけに使われた工具を復元すると、径12mmから14mmの細い円棒状の工具となり、これを回転させて穴あけを行ったことがわかります。この工具の規格は、現在の小型削岩機で使用するドリルより細く、木工用ドリルに近い形状です。

昭和28年頃の富山産業大博覧会に伴う石垣工事では、石垣外側に足場を組んで作業を行っています。その頃、電気ドリルのような機器が使用された可能性は十分考えられます。

電気ドリルでは、花崗岩を割るような穴を開けることは到底不可能なことから、単なるイタズラか、あるいは石に金具などを引っ掛けるための穴などかもしれません。いずれにせよ、江戸時代に行われた穴あけではないことは確かです。
(古川)