石に見る墨書
(1) 墨書文字の発見

2006年の石垣解体修理によって墨書文字が書かれている築石があることがわかりました。搦手石垣南端部を中心に発見されています。墨書文字は墨書、朱墨、墨書+朱墨の3種類に分類できます。

(1) 墨書
12例確認され、日付や人名らしき文字が書かれた一石以外はすべて割面に記されます。文字の種類は「十二」などの単独数字や「十三ノ一」という漢数字の組み合わせ・花押?・記号があり、数字はすべて縦書きでした。
記号の中には刻印と同じ種類があります。大きさも刻印と同じであることから刻印の下書きまたは刻印の代わりであると考えられます。
墨書文字は大きく石の中央に書くという特徴があります。
墨で「十」と記された築石
墨で「十」と記された築石

(2) 朱墨
最も多い31例確認されました。文字の種類は縦書きの漢数字または文字の構成・単独漢字で記号等はありません。ほとんどが底部割面に記されていました。朱墨は雨や紫外線の影響か時間の経過に伴い薄れていくため本来は側面などに記されていても消えてしまった可能性があります。
解読できた文字の多くは「七ノ」で始まっており、墨書・朱墨文字で記される漢数字や漢数字と文字の組み合わせは改修時に積む位置・場所を示したと推定されます。残念ながら改修で位置が変わっているらしく分布状況から「七ノ」で始まる朱墨文字の共通点は見つかりませんでした。
朱墨文字は墨書文字と対称的で小さな文字で石の左右端に寄る特徴があります。

(3) 墨書+朱墨
5例あり、すべて割面に記されます。文字の特徴は単独で記される墨書・朱墨と同様です。
2種類の文字が同じ石に記されることから墨書時・朱墨時・2006年の3回は確実に積み直しが行われていることがわかります。墨書と朱墨の先後関係は不明です。

この他、鉄門石垣(1工区)からは朱墨3点(記号1点・漢数字2点)が見つかっています。さらに2006年から2007年の石垣解体調査でも佐藤美術館側の搦手石垣(4工区)から搦手石垣南端部と同じような墨書文字が発見されており、今後調査結果をまとめていく予定です。
(鍋谷)