1.研究の目的

Purpose of research
日本列島では、旧石器時代以来、人類は身近にある石を加工し、「石器」として生活の道具としました。
金属器が出現してからは石器が減少しましたが、代わって信仰対象として石造物が増え、中世末以降建築物・土木構造物にも利用されるようになりました。
 
富山県内においては、中世には、高岡・氷見海岸部の石灰質砂岩せっかいしつさがん凝灰岩類ぎょうかいがんるいと常願寺川の安山岩あんざんがんの2つが主に使われました。
近世になると、越前笏谷石しゃくだにいしの搬入、庄川金屋石かなやいしの出現により、石材の種類は多様化し、また金屋石は、金沢に多く供給されたブランド石として有名です。
 
2013年富山市で開催された日本石造物研究会大会では、中・近世石造物に使われた地域石材を分類整理し、石材名称を統一しました(項目2参照)。
石材は、肉眼観察だけでは判別不可能なものが多いという障壁しょうへきがあります。
このため、岩石帯磁率たいじりつを同定の指標とできるかどうかの検証を行うこととしました。
 
帯磁率(Magnetic Susceptibility)とは、磁化の強さと磁場の強さの比のことであり、磁化率ともいいます。
岩石では、磁鉄鉱じてっこうなど磁性鉱物の含有がんゆうの程度により値が変化します。
これを岩石の識別や風化・変質の指標として使用できる場合があります。
花崗岩などの火山岩では、風化・変質により磁鉄鉱が赤鉄鉱せきてっこう褐鉄鉱かってっこうに変化すると帯磁率は小さくなるという磁化特性が認められています。
この性質を似たような石材の判別に使えないかという試みを行ったものです。 
(古川)