江戸の菩提寺
1.菩提寺ぼだいじの概要

前田家が参勤交代で江戸詰となったとき、江戸で死去した際に、菩提を弔う菩提寺を設けました。記録では14ヵ寺が確認でき、最も多いのは臨済宗廣徳寺、次に日蓮宗妙雲寺でした(『前田氏家乗』)。

以下にその一覧を示します。

山号・寺院名 宗派 所在地 人数 備考
円満山廣徳寺 臨済宗 下谷 18 大徳寺派
瑞応山妙雲寺 日蓮宗 谷中 12  
諏訪山吉祥寺 曹洞宗 駒込 2 江戸栴檀林
大雄山海禅寺 臨済宗 浅草 2 妙心寺派
妙高寺   橋場 1  
養玉院 天台宗 下谷 1  
光照寺 浄土宗 牛込 1 増上寺末
瑞泉寺 浄土宗 今戸 1  
蓮光寺 浄土宗 駒込 1  
教風山大久寺 法華宗 下谷 1 陣門流
妙亀山総泉寺 曹洞宗 橋場 1 久保田藩墓所
青原寺 曹洞宗 中野 1 青源寺(『前田氏家乗』)
宝珠山延命院 日蓮宗 谷中 1  
久遠山常泉寺 日蓮宗 向島 1  

下谷・谷中の寺院が利用されたのは、富山藩江戸中屋敷が下谷池ノ端に置かれたため、その近隣の寺院を利用したと思われます。
富山における藩主菩提寺は、日蓮宗大法寺と曹洞宗光厳寺でしたので、江戸において臨済宗廣徳寺が選ばれたのは、必ずしも宗派に基づいたものではなかったことがわかります。
(古川)