国立科学博物館便り(10) 2014年6月

出土人骨の推定身長

1991年から2008年に出土した人骨8個体のうち身長が推定できたのは、2008年出土の2号人骨(女性、熟年から老年)と右岸出土人骨(男性?、成年)の2個体のみである。いずれも上腕骨の最大長に基づくが、前者は保存状態不良の骨からの大雑把な推測値によるものである(現代日本人用の藤井(1960)の式を使用)。
 
2号人骨 右岸出土人骨
2号人骨 右岸出土人骨
性別 女性 性別 男性?
年齢 熟年から老年 年齢 成年
身長 約148cm 身長 153.6cm
 
平本(1981)によれば、縄文時代中・後・晩期人(東海地方)の平均推定身長は男性で157.3cm、女性は146.9cmである。これを基準とすれば、2号人骨(女性)は縄文時代中・後・晩期人女性の平均値とほぼ同じ、右岸出土人骨(男性?)も、標準偏差(推定値のバラツキ)を考慮に入れると、それほど極端に低身長ではない。
 
科博・名誉研究員 溝口優司
 
(参考文献)
藤井明 1960 「四肢長骨の長さと身長との関係に就いて」『順天堂大学体育学部紀要(3)』PP49-61
平本嘉助 1981 「骨からみた日本人身長の移り変わり」『考古学ジャーナル(197)』PP24-28