シリーズ縄文講座(21)
縄文人の平均寿命
 
現代日本人の平均寿命をご存知ですか?厚生労働省の「平成23年簡易生命表の概況」によると、全国の男性平均寿命は79.44歳、女性平均寿命は85.90歳です。これは世界的にもトップクラスに入り、進歩する医療や栄養バランスの取れた食事などが長寿の要因だと言われています。
では、縄文人の平均寿命はどのくらいだったのでしょう。貝塚や墓に埋葬された人骨を詳しく調べることで、死亡時の年齢を推定することができます。人口学者の小林和正氏は縄文時代前期から晩期にいたる男性133体、女性102体の人骨を調べ、縄文人の平均寿命を推定しました。
 
縄文人の平均寿命
小林氏は平均寿命を推定する際に、病気や怪我での死亡率が高いにもかかわらず乳幼児など若年層の人骨出土数が成人人骨より少なかったことを重視し、偏りが生じないよう15歳以上の人骨だけを資料としました。15歳まで生きた人がそののち平均で何年生きたかを表す「平均余命」を推定した後、その値に15年を加えて平均寿命を計算します。
小林氏によって推定された平均余命は男性16.1歳、女性16.3歳でした。その結果、縄文人の平均寿命は男性31.1歳、女性31.3歳とされました。当時は大変厳しい時代だったのです。しかし、この結果は15歳未満の埋葬人骨が考慮されていないため、実際の平均寿命はこれより更に短くなります。
 
小竹貝塚の発掘調査
富山市呉羽町北に所在する小竹貝塚では過去4回の発掘(1970、1991、2008、2010年)において数多くの遺物のほか、現在までに78体の埋葬人骨が確認されています。縄文時代前期の埋葬人骨としては国内最大で、埋葬形態や副葬品をはじめ当時の葬制を検討する際に重要な資料となります。人骨は国立科学博物館の協力のもと、身長や性別などの形態的研究、DNA分析による血縁関係の推定、安定同位体分析による主要食性の研究などが行われる予定です。
小竹貝塚の埋葬人骨研究によって、今後、縄文人の平均寿命に関する研究が進展すると考えられます。
 
参考文献 
小林和正 1967年 「出土人骨による日本縄文時代人の寿命の推定」 『人口問題研究102』国立社会保障・人口問題研究所
山口 敏 1982年 「古病理学・古人口学」 『縄文文化の研究1縄文人とその環境』 雄山閣
山尾一郎 1997年 『縄文人に学ぶ』 地歴社