シリーズ縄文講座(13)
不思議な出土品
タカラ貝形土製品
 
縄文時代中期の内陸部の4遺跡から、タカラ貝を模倣したとみられるタカラ貝形土製品が6点出土しています。その分布状況は富山・飛騨・長野北部の直径約100km圏内の地域に限られています。
その特徴は、中型から大型のタカラガイを模倣したとみられること、1から2点の穿孔が認められること、殻口部を忠実に表現していることです。
北代遺跡のタカラ貝形土製品は、長さ5.5cm、幅4.0cm、厚さ3.1cmの大きさで、完全な形です。表面中央の緩くカーブする沈線は殻口、沈線の両側の細かい刻み目は外唇歯・内唇歯、表面及び側面の細かい編物痕は貝殻表面の模様、中央の貫通する孔は水管溝を表現したものと考えられ、実物ときわめて近いものとなっています。
タカラ貝形土製品
タカラ貝形土製品
【北代遺跡出土】
本遺跡以外の出土例として、中期中葉の富山市花切遺跡(旧大山町)2点、中期後葉の岐阜県高山市岩垣内遺跡2点、長野県長野市旭町遺跡1点があります。
年代や製作の特徴から、この土製品は富山においてまず出現し、神通川から飛騨越えのルートで岐阜・長野などの山間部へ広がったことが推定されます。
この土製品は、紐に通すなどして儀式に使われたとする説、ペンダント、垂飾としてばかりでなく、女性と出産に係る象徴としての護符説、目的は不明だが穴にヒモを通し何かにくくりつけ安置したものとする説がこれまで提起されていますが、なぜ立山連峰を中心としたエリアでのみタカラ貝形土製品が製作されたのか、その理由は不明です。