シリーズ縄文講座(10)
縄文人の高い漆工技術
 
うるしは縄文時代から塗料として使用されていました。福井県の鳥浜貝塚や青森県の三内丸山遺跡などの遺跡からは、縄文前期(今から約5500年前)の漆塗りくしや器の一部が出土しています。また、富山県小矢部市の桜町遺跡からは同じく赤色漆塗りの鉢が見つかっています。
漆液を集めるにはまず最初に漆掻うるしかきと呼ばれる、ウルシ科の樹木から樹液を採取する作業が必要となります。さらに採取した漆の原液(樹液)は接着剤のような性質のため、そのままでは塗料として使用することはできません。そこで漆液を均質にかき混ぜる「なやし」や、余分な水分をとばす「くろめ」といった作業を行い、漆液を塗料へと変えていきます。
これらの工程を経てできた漆液に、赤色顔料(主としてベンガラ、縄文後期以降は朱が使われ始めます)を練り合わせてはじめて赤色漆ができます。ちなみに、「なやし」や「くろめ」の作業を行わなければ、鮮明な赤色の発色は望めません。縄文時代、既に現代に勝るとも劣らない漆工が成り立っていたと考えられます。
また、富山市水橋地区にある戦国時代(約400年前)の城館跡じょうかんあとの小出城跡からは、漆の塗られた櫛や様々な赤色文様が描かれた漆器が出土しました。当時の格の高い人々が優れた漆器製品を好んだため、漆製品専門の職人を城内に招き製作させていたと推測できます。
漆は文化に強く影響を与えながら常に人々の美意識を刺激していたようです。
 
縄文時代の漆椀 中世の漆椀
縄文時代の漆椀 中世の漆椀
【青森県 三内丸山遺跡出土】 【小出城跡出土】
出典:IPE「教育用画像素材サイト」
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/