修理工事
 
平成26年度に予定している第1号住居(複製)の上屋復元に向けて、クリ丸太材(岐阜県内産)を調達し、乾燥前に樹皮を剥いで組上げ直前までの加工を施しました。その後、十分乾燥させたうえで丸太材表面に木材保存剤を塗布しました。剥いだ樹皮は、土屋根の下地材として活用します。別途調達したクリ樹皮・スギ樹皮と共に、薬品薫蒸を行い、木材加害昆虫を駆除しました。これらの屋根材は収蔵庫内でさらに乾燥させています。
 
 
 
 
 
復元建物屋根試験体設置
 
第1号住居(複製)の上屋復元では、第70号住居の発掘調査成果に基づき、屋根土を赤土主体に変更する予定です。北代縄文広場では、これまで黒土主体の土屋根竪穴住居を復元してきましたが、赤土主体の復元実績はありません。このため、赤土主体の屋根土の材料や配合比、施工法の検討を目的として試験体を設置し、秋雨・降雪・凍結・融解・融雪等の気象変化がどのような影響を及ぼすか、暴露試験を行いました。
 
屋根角度はこれまでと同様に35度とし、屋根土の保持材としてハニカム型フレキシブル型枠とジオネット入り長繊維不織布を用いました。赤土(母材)は富山県小矢部市産と富山市婦中町産の2種、混和材として富山県神通川水系産川砂、宮崎県都城市産(ひゅうが土)を用い、これらの配合比率は2種、ハニカム型フレキシブル型枠の高さを2種として6つの試験体を設置しました。各試験体の表面には半分ほど粉塵飛散防止剤を散布して、表面保持が可能かどうかを検証することとしました。試験体は本修理事業の完了まで設置し、経過観察を継続する予定です。
 
復元建物屋根試験体設置状況
設置した屋根試験体
なお、試験体の製作にあたり、東京インキ株式会社(東京都)からハニカム型フレキシブル型枠(テラセルT-50SP/T-100SP)・ジオネット入り長繊維不織布(トレップTT-3S)、テクニカ合同株式会社(兵庫県)から粉塵飛散防止剤(ダストシャット)をご提供いただきました。
   
 
 
 
 
専門家会議(屋根検討部会)
(平成25年6月28日)
 
建築環境工学・鉱物科学・考古学の専門家により、@第1号住居(複製)の施工法の改善策、A復元建物屋根試験体の構造について検討し、その結果を試験体製作に反映させました。
 
 
 
 
 
第7回専門家会議
(平成25年9月27日)
 
文化庁文化財部記念物課文化財調査官同席の下、6名の専門家で今後予定している第1号住居(複製)の上屋復元の施工法、および事業報告書作成の方向性について検討しました。
なお、文化財調査官は挨拶のなかで次のように述べられました。
 
「史跡整備は、活用やその後の再整備を含めて全国的に課題が山積しています。史跡北代遺跡のように、課題解決を目的とした試験や分析を行っている事例はほとんどありません。改良を加えた再整備の実践例を、事業報告書の形で全国に発信できることを期待しています。」
 
 
(1)第1号住居(複製)の施工法について
事務局提案の施工法(赤土・砂・軽石を混合した屋根土を木製用具で2層構造に人力叩き施工)を検討し、@試験体の経過観察結果も踏まえ、均等に表面排水される配合比を検討すべきこと、A屋根土の保持材として現代資材を挟み込むので屋内樹皮等の腐朽リスクが低減するものの、目標とする耐用年数を超えられるよう不織布の目詰まりを極力避けられる施工法にする必要があるとの指摘を受けました。
 
(2)事業報告書作成の視点および内容について
今後作成予定の事業報告書の方向性を検討しました。各専門分野の個別論を示したうえで、その統合版を最後にまとめ、総括とすることとしました。各専門分野の見解を統合する過程もわかる形で報告する必要があるとの指導を得ました。
 
(3)その他
試験体設置作業(基礎構造)を視察し、今後の検討の参考としました。
試験体の視察風景