呉羽モグラ池遺跡 呉羽(くれは)モグラ池遺跡

呉羽山西麓で発掘された方形周溝墓(ほうけいしゅうこうぼ)
(富山地域)
   
呉羽モグラ池遺跡のあらまし
空中写真
空中写真(下が北)
呉羽モグラ池遺跡は、呉羽丘陵の峠茶屋西側にある独立丘陵(標高29m)と谷部に立地します。縄文、弥生、古代の複合遺跡で、平成3年に宅地開発に伴って発掘調査を行いました。調査では、丘陵上から弥生時代後期の方形周溝墓が見つかりました。
 
 
方形周溝墓の概要
2つの埋葬施設(遺体を埋葬した穴)と、それをコの字状に囲む周溝を確認しました。
埋葬施設は、縦方向に2つ配置していましたが、境となる仕切りはありませんでした。大きさは1.3m×0.72m、1.28m×0.54mといずれも小規模です。また、短辺の溝は一段深い部分があり、周溝内にも埋葬した可能性があります。
周溝の外回りの大きさは、長辺が約10m、短辺が5mです。縦に長いコの字状をしており、通常の半分の大きさです。短辺の溝は更に南側へ続いていました。
方形周溝墓(東から)   周溝の遺物出土状況(南から)
方形周溝墓(東から)   周溝の遺物出土状況(南から)
 
 
埋葬施設と周溝から出土した弥生土器
(かめ)(つぼ)高杯(たかつき)・チャートの剥片(はくへん)などの遺物があり、周溝からは装飾の付いた壺が出土しました。口径25cm、胴部径36cmの大型品です。口の部分には4本の凹凸をつけ、ボタン状の円形浮文(ふもん)を2つずつ4か所に貼りつけています。長い首と胴部の境には粘土を貼りつけて帯のようにし、刻みをつけています。底の部分は欠けており、意図的に壊して穴をあけたものです。この土器の文様から、方形周溝墓が造られた時期は弥生時代後期後半(法仏式(ほうぶつしき)期)です。
周溝から出土した装飾壺
周溝から出土した装飾壺
 
 
呉羽モグラ池遺跡の方形周溝墓の特色
県内の方形周溝墓では一辺の長さがほぼ同じ正方形が多いのに対し、この遺跡では一辺が2倍の長さになる長方形という特殊性があります。また、埋葬施設を縦方向に2つ配置していることや、丘陵上に単独という点でも他の類例と異なっており、弥生時代の墓の在り方を考えていくうえで貴重な資料といえます。なお、この墓の造営主体は、呉羽丘陵西側の台地上にあると考えられます。